2014年1月1日

1月のテーマは「おどる絵本」【広松由希子の今月の絵本・26】

絵本作家で評論家の広松由希子さんの連載。毎月、テーマに沿った、おすすめ絵本をセレクトしていただきます!

1月のテーマは「おどる絵本」

すみません。連載1回お休みしてしまいました。
「そのぶん、新春スペシャルということで
 うんとめでたい感じにしてください」と
編集長のMさんから言われ、
うーんと悩んで、いきついたのがこれっ。

ひろまつ
どうですー(なぜか自慢げ)

暗いニュースもけし飛ぶような、
ごきげんなラインナップじゃありませんか?

2014年、気持ちも新たに
レッツ・ダンスとまいりましょう。


軽やかな新年の幕開けにふさわしいのは、
荒井良二さんの『ユックリとジョジョニ』。

森に住むユックリは、歌がじょうず。
アコーディオンを弾きます。
「ブーバ・トリロリ……」

町に住むジョジョニは、ダンスが得意。
「クルリ・クル……」

ふと気がつくと、ふたりは出会い、
いっしょに踊っていました。

音とダンスが絵本のなかで、
響き合って、溶け合って、
色と形が、ときめきの旋律を奏でます。

なにかが変わる、出会いと別れ。
今年も、きっとありますね。

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『ユックリとジョジョニ』
荒井良二/作 ほるぷ出版
定価1470円 1991

 

 

ダンスといえば、

こんなとんでもない傑作も。
スズキコージさんの『やまのディスコ』。

主人公は、山一番のおしゃれな白馬のみねこさん。
ひづめに赤いハイヒール、たてがみにカーラー巻いてぬかりなし。
やぎのさんきちくんと二人乗りで、
山の一本杉にオープンしたディスコにバイクをとばします。

バンドのロック演奏に、
どぎまぎしている動物たちのなかで、
「エイッ」と踊り出したのが、みねこさん。
おかげで、みんなも元気づきます。

ごきげんナイトフィーバーのはずでしたが、
やっぱり、ミラーボールが蜂の巣なのがいけなかった……?

バブル真っ只中に生まれた作品ですが、
不滅のエネルギッシュなおかしさです。

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『やまのディスコ』
スズキコージ/作 架空社
定価1575円 1989

 

 

ロックンロールからハワイアンへ。

一挙に全身力が抜けるのが
高畠純さんの『おどります』。

きりっと正面向きの表情のぶたが、
ページをめくると、
「メケメケ フラフラ
    メケメケ フラフラ」
どっと脱力のフラダンス。

馬も、まじめな顔してますが、
めくると、
「メケメケ フラフラ
    メケメケ フラフラ」

う~ん、半端ない脱力感。
犬も、カバとゾウも、タコも……
片手にもった布の小技も、笑えます。
親子で踊れば、不機嫌な気分も、ふやけます。

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『おどります』
高畠純/作 絵本館
定価1260円 2005

 

 

ハワイアンからアフリカンへ。

沢田としきさんの『アフリカの音』の
力強い太鼓のリズムにあわせ、生命のダンスを踊りましょう。

絵本を開くと、
一気に西アフリカに連れていかれます。
乾いた風。土のにおい。
響いてくるのは、ジンベの音。
ジンベとは、ヤギの皮で作られた太鼓です。

「パラン パラン」

祭の朝、太鼓の音とともに
たくさんの人たちが集まってきます。

「グン ゴド パ グン ゴド パ
 グン ゴド パ グン ゴド パ」

大地の恵みと、
いのちの連なりに感謝して、
「タイコたたき タイコたたく
 みんなおどり みんなおどる」

輪の中のひとりになって、
生きるよろこびに、体が熱くなる踊りです。

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『アフリカの音』
沢田としき/作・絵 講談社
定価1575円 1996

 

 

おしまいに、2013年、
ひときわ華麗なダンスを見せてくれた
『きょうはマラカスのひ』で、しめましょう。
銅版画家、樋勝朋巳さんの初めての絵本です。

性別も種別も不明な、ぴたぴたタイツの3人組、
パーマさんと、フワフワさんと、クネクネさん。

今日は「マラカスのかい」の発表会。
会員3人だけで家に集まり見せ合う会ですが、
クネクネさんは、難しいリズムと振り付けに挑戦し、
練習に余念がありません。

「チャッ ウー
 チャチャ ウー
 チャッ ウー
 チャチャ ウー」

足も使って、
「カン カン カン カン カン カン カン!」

はりきってのぞんだ発表会でしたが、
まさか、こんなことになるなんて!?

味わい深い銅版画で描かれる、
おっとりおかしな日常。
のんびりした時間の中に刻まれる
マラカスの音と、機敏なダンス。
耳に響き、目に焼きついて離れません。

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『クネクネさんのいちにち きょうはマラカスのひ』
樋勝朋巳/文・絵 福音館書店
定価1470円 2013
 


とびきりのダンス絵本たちは、元気をくれますね。

さあ、
軽やかに
パワフルに
肩の力を抜いて
大地を踏みしめて
心のままに踊りましょう。

 

 

広松由希子 ひろまつゆきこ/絵本の文、評論、展示、講座や絵本コンペ審査員などで活躍中。
2017年ブラティスラヴァ世界絵本原画展(BIB)国際審査員長。著作に絵本『おかえりたまご』(アリス館)、「いまむかしえほん」シリーズ(全11冊 岩崎書店)や 2001~2012年の絵本案内『きょうの絵本 あしたの絵本』、訳書に『ヒキガエルがいく』(岩波書店)『うるさく、しずかに、ひそひそと』(河出書房新社)など。2020年8月、絵本の読めるおそうざい屋「83gocco」をオープン。https://83gocco.tokyo

web連載「広松由希子の今月の絵本」

Twitter https://twitter.com/yukisse
facebook https://www.facebook.com/yukiko.hiromatsu

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