
ミニチュアの視点からの「見立て」は絵本でも大人気。夢眠ねむさんが、田中達也さんと対談。【夢眠ねむの絵本作家に会いたい!・3】

不思議なしかけのおやすみ絵本 マジック・トーチのえほん
「これからの本好きを育てる書店」を営む夢眠ねむさんが、憧れの絵本作家さんを訪ねる連載第3回。
今回のゲストは、ミニチュア写真家・見立て作家、そして絵本作家としても大活躍の田中達也さん。
田中さんはミニチュアの人形と日用品で「見立て」のアートを撮影し、「MINIATURE CALENDAR」として毎日1作品ずつネット上で発表しています。
その創作の秘密を、本誌に続けてweb版で特別に公開します。
子どもの頃からフィギュア好き
夢眠ねむ(以下夢眠) 今回は、制作道具やミニチュアの人形もたくさんお持ちいただいて、ありがとうございます。
私、小学生ぐらいのときにこの人形を雑貨屋さんで見て、憧れたんです。
でもこれ、子どもだと買えない、結構なお値段ですよね。
田中達也(以下田中) そうですね。ドイツのプライザー社の人形です。
夢眠 この、荷物いっぱいの人たちが気になってるんですけど。20年後くらいの夫婦像のような(笑)。
私たちも本当に夫婦で細かいもの好きなんで、今息子がトミカにハマってるんですけど、私たちの方がテンション上がっててて。
田中 じゃ、これはプレゼントで。
夢眠 いいんですか! 子どもの頃の私が、泣いて喜びます。ありがとうございます。
田中 わかります。自分も子どものときに買えなかった欲を、今満たしているところもありますから。
夢眠 昔シルバニアを買ってもらえなかった人が、大人になってめちゃくちゃ買うような。
田中さんは今のお仕事に役立っているから、まだ理由になってますけど。
田中 仕事になってなかったら、相当怒られてますよね。新作が出ると必ず買っちゃったりして。
夢眠 じゃあお家は、このミニチュアの人形たちであふれてるんですか。
田中 たくさんありますね。仕事場以外に、人形用の保管部屋を2部屋借りてるんですよ。
スター・ウォーズとか、キャラクターのフィギュアもその部屋に置いて。
夢眠 普通のフィギュアとかもお好きなんですか。
田中 もちろん集めてます。もともと趣味でフィギュア好きだったのが、最近ようやく、仕事のために買ってるようになってきた気がします。
夢眠 でも、勉強ですもんね。そこから発案するために。
最初はこうした市販の人形たちを使って撮影していて、その後、オリジナルの人形も作り始めたと。
田中 そうですね、作品のアイディアに合わせて、ポーズも変えた方がいいなとなってきて。
でも、プライザー社のものだけでも、スポーツの人形とかかなりいろんな種類があるし、だからこそ作品のアイディアもたくさん出てきたところはありますね。
一日一作品、筋トレのように
夢眠 制作道具は、筆に接着剤に……、わあ、針だ。
田中 針はよく使いますね。人形に色を塗るときにも使えるし。
夢眠 確かに、もう筆じゃできないサイズ感ですもんね。
田中 あと、ちょっと人形を浮かせたいときとかに、針を刺して支えたり。とにかく色々使えます。
夢眠 こういうのも全部、ご自分で編み出された技なんですよね。
田中 そうですね。教えてくれる人はあまりいないので。
他のカメラマンとはノウハウが結構違って、その都度自分で考えています。
夢眠 全部必要に迫られてというか、表現したいことが先にあって、「こうするには……」と編み出している。で、「こういうときはこれが使えるな」っていう技のストックがどんどん増えてくる。面白いですね。
ところで、田中さんはダジャレが得意なんですか。作品がいつもかっこいいけど、ダジャレまじりのタイトルでちょっとボケてるみたいなところが好きです。
田中 でも、瞬発力はないんですよ。ねづっちさんの謎かけみたいにその場ですぐ出るわけじゃなくて、紙に書き出して、後でひねり出すタイプなので。
夢眠 ハガキ職人タイプですね。
田中 そう、結構熟考しています。大喜利とか「IPPON」みたいに、答えを出せたら最高なんですけどね(笑)。
夢眠 その気持ちよさってありますよね(笑)。
でも、ネタが尽きずに毎日作品を発表し続けているのは、ずっとワクワクしっぱなしで作られているんですか。それとも、スランプもあったり?
田中 なんか楽しくないときはあります。テレビゲーム好きでも、毎日やってたらさすがにって、そういう感覚に近いんじゃないですか。
でも、出張のときとかに作品をまとめ撮りして、5日間ぐらい制作から離れると、リフレッシュはしますけど、今度はアイディアがなんかちょっと変になるんですよね。「これ、いいのかな」と思い始めたり。
夢眠 夢で見ためっちゃ面白いアイディアが、起きたら「つまらん」みたいな。
田中 そう、面白いと思い込んじゃって、撮った後に「なんかこれ、ダメだな」と思ったり。
よく「筋トレみたいな感じ」っていうんですけど、定期的にちょっとずつ、1日1作品ぐらい制作している方が、アイディアは安定しますね。