2025年4月19日

お父さんたちが本来持ってる「母性」を発揮! その理由は環境にあった…。ドイツの社会で感じていること【日登美のタベコト in Berlin・97】

 ベルリン在住で6人の子どものお母さん。モデルとして活躍する傍ら「台所から子育て、暮らしを豊かに」をコンセプトに、オンライン講座とウェブサイトを主宰している日登美さんによる、「食」からはじまるエッセイです。

ベルリンの子育て

私の見ている限り、ベルリンのお父さんたちは育児参加率が非常に高いです。お父さんがお母さんに頼まれて代理として育児している、というより子育てレギュラーメンバーとして互いに同等に育児、家事を担っているという家庭がスタンダードだと思います。まるで家に2人お母さんがいるかのような状態。むしろお父さんの方が母性的?と思われるほどなのです。

子どもの学校のクラス旅行の付き添いも、お母さんよりお父さん率が高かった。

このようになったのも第二次大戦後からじわじわとフェミニズム運動などを経て変化していったのだとか。けれど、育児や家事の参加って別に規則があるからできるようになる、というのではないのだと思うんです。仕方なくやる、というのでは子育てはうまくいきませんし、何より互いに楽しくありません。そう思うと、こんなに自然に育児ができるほどお父さんたちの母性が発揮されるようになった背景には何があるのかな?とつい考えてしまいます。

学校の親睦旅行では、子どもの身の回りの世話も親の仕事。ここでもお父さんが活躍。

それはやっぱり大人が安心できる環境が整っている、ということなのじゃないかなと想像します。例えばドイツでは「クランクシュライブング」といって、病気をすると仕事を有給で休める書類を医者が出してくれますし、子どもが病気で早退、または欠席という場合は親も仕事を休むことに周りも納得するのが基本のようです。

考えてみれば当たり前のことが実際に当たり前に認められているだけのことかもしれませんが、体調が悪ければ休まなくてはならないと認めてくれる、それによる経済の不安がない、というのは産休、育休、病欠など「人間として生きる当然の権利」を社会全体で保障しているという安心感につながります。

そんなふうに心に余裕があると、子どもに向ける眼差しもゆとりのあるものになっていくし、他人に対しても寛大になっていく。そういう場所でこそ私たち大人も何かを「慈しむ」という心が育つスペースができるのかもしれません。

本当のゆとり教育って子どもに休みを与えるんじゃなくて親に休みがあってこそ、な気がする。

本来誰もが持っている温かな力を自然と発揮するには、まず大人に安心の環境があってこそ。そうすることで無理矢理でなく、男女関係なく自然と子育てを楽しむ力が生まれてくる。ベルリンの子育てを眺めていてそんなふうに思うのです。

日登美/ひとみ
3男3女6児の母。10代よりファッションモデルとして雑誌、広告等で活躍。その後自身の子育てから学んだ、シュタイナー教育、マクロビオティック、ヨガなどを取り入れた自然な暮らしと子育てを提案した書籍、レシピ本など多数出版。現在はモデルとして活躍する傍ら、オーガニック、ナチュラル、ヘルシーをモットーに、食、暮らしと子育てのワークショップ、オンライン講座などを行う。 

台所から子育て、暮らしを豊かに。「Mitte(ミッテ)
instagram / @hitomihigashi_b
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