残業はしない。風邪をひいたら出社できない。そして、主食のパンは作るより「買う」。「暮らしのゆとり」が最優先のドイツの生き方【日登美のタベコト in Berlin・65】
ベルリン在住で6人の子どものお母さん。モデルとして活躍する傍ら「台所から子育て、暮らしを豊かに」をコンセプトに、オンライン講座とウェブサイトを主宰している日登美さんによる、「食」からはじまるエッセイです。
ドイツ人はパンを焼かない
ドイツに住んでびっくりしたことが一つあります。それは、ドイツ人はパンを焼かない!という事実です。
ドイツといえばパン。あのずっしり重たくナッツや雑穀がくっついた栄養たっぷりに見えるドイツパンが主食です。主食なんだからやっぱり家庭で作るんでしょうね、と思っていたらどっこい。ドイツではパンは買うもの、なんです。主食のパンを買うんです。作りません。驚きました。
だってわたしたちがいつもご飯を買うようなものです。たまにならわかるけど、普通主食なんだから家で作りますよね。でもドイツでは主食を家庭で作らなくても大丈夫なんです。
というわけで、朝ご飯にパン、昼ごはんにパン、夜ご飯にパン、なんて言っても楽勝です。
パン屋さんは日本のコンビニほど結構どこにでもあります。近代的なお店から老舗、オーガニック専門からグルテンフリーまで。さまざまな種類のパン屋さんが毎日営業しています。ドイツでは日曜日は基本お店を開けてはいけないのですが、パン屋さんは例外です。だから日曜日の朝だって絶対どこかのパン屋さんは開いていて焼きたてのパンが苦労なく食べられるのです。
基本暮らしのいろいろが不便なドイツですが、パン屋に関しては楽。生きていくのに必須のところは手に取りやすく、そして楽になるようにできている。とても効率がいいなと思います。
その上、働き方も8時間労働の徹底、残業は悪しきものとして認めませんし、日曜日は基本全て休み。風邪をひけば病院で証明書を出してもらい仕事に行かなくていい、行ってはいけないような仕組みになっている。そのうえ、主食も作らない。もうゆとりしかないんじゃないか!?という暮らしぶり。
そう。ドイツでは変なところでがんばらない。暮らしの上でのエッセンシャルである健康と食、休息は守られるべきという社会のシステムがあるのです。パン大国ドイツでパンを焼かない。これが意味するところは、つまりゆとりある暮らし、ではないかと眺めています。
いや、焼いてもいいんです。それにコロナ禍以降は家で焼く人も多くなっていると思いますし、元から焼く人だってもちろんいます。我が家も時々パンを焼きます。だって手作りも美味しいから。でも、無理に手作りしなくていい。それより暮らしのゆとりを大事にしよう、そういう意味での台所の効率化を考え、無駄な努力を強いないようにしよう。そういうところはすごくいいなぁと思うのです。
日登美/ひとみ
3男3女6児の母。10代よりファッションモデルとして雑誌、広告等で活躍。その後自身の子育てから学んだ、シュタイナー教育、マクロビオティック、ヨガなどを取り入れた自然な暮らしと子育てを提案した書籍、レシピ本など多数出版。現在はモデルとして活躍する傍ら、オーガニック、ナチュラル、ヘルシーをモットーに、食、暮らしと子育てのワークショップ、オンライン講座などを行う。
台所から子育て、暮らしを豊かに。「Mitte(ミッテ)」
instagram / @hitomihigashi_b
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