明日はナニする?コロナ禍で生まれた我が家のアクティビティ【教えて!世界の子育て~ドイツ~】
海外ではどんな子育てをしているの? 日本から離れて子育てをするママたちに、海外でのようすを教えてもらう「教えて! 世界の子育て」。
場所や文化が違うと、子育ては違うのでしょうか。日本での子育てや生活と同じこと、違うこと。各国からリアルな声を伝えてもらいます。
ドイツで子育てをする中原さん宅の敷地内、半径5mで起こったできごとを届けてくれた前回に続き、ベリー続編! 日本でもおなじみの、あのベリーも登場です。
庭の実を
モグモグモグ!
さてさて、前回のセイヨウスグリの他にはどんなベリーがドイツでは食べられているのでしょうか。はい。みなさん、カゴの準備はよろしいですか? 摘みに行きますよ!
まずこちら、Himbeereヒンベーレ(木イチゴ)。ラズベリーやフランボワーズという名前でも親しまれている、柔らかくて優しい香りの子どもたちのおやつです。
毎日どんどん新しい花が咲き、数日後には真っ赤な実になります。食べても食べても次から次へと実がなり、品種によっては夏から晩秋にかけて実をつけるものもあるので、なんと霜が降りるまで楽しむことができます。
ジャム以外にも、カスタードパイに載せたり、ゼリー寄せにしたりと生の風味がなんといっても美味しいベリーです。
お次はこちら、Johannisbeere(フサスグリ)ヨハニスベーレと読みます。
黒・赤・白の実があって、小さな透き通る実が連なるランタンのようで可愛らしい。ぱっと目を楽しませる色味から夏のレストランでは彩りに添えられているところをよく見かけます。ぽろぽろと溢れる粒が宝石のよう。お皿の上に輝く食べられる飾りです。
噛むとなかなかに強い酸味が口に広がり、タネを噛むとほのかな苦味が。クリームなどによく合います。
ドイツではこのヨハニスベーレを一年中使いますから、夏の収穫ではせわしなく摘んでは煮て、摘んでは煮て、たくさんの瓶にソースやジャムやジュースを作って保存します。
これを寒くなってから温かなスパイスワインに入れたり、ソースを蜂蜜とお湯で溶いてリラックスドリンクにしたり(柚子茶みたいですね)、ケーキを焼くのに使ったり。鹿や猪などのジビエ肉料理にはヨハニスベーレのソースは欠かせません。
こちら皆さんご存じかもしれません。Schwarze Johannisbeereシュヴァルツェ・ヨハニスベーレ。日本ではフランス語読みでカシスと呼ばれています。カシスといえばカクテルなどに使われるアルコールのカシスリキュールがなんといっても有名です。黒すぐりは3色あるヨハニスベーレの中でも酸味が柔らかく、独特の風味があり、いくらでも食べられちゃう。実は葉っぱも香り高くて美味しいんですよ。
さあどんどん参りましょう。こちらは我が家でもっとも生長が早く毎年根元まで切り戻さないと庭中がいばらに覆われてしまいそうになるベリー、Brombeereブロムベーレ。 アメリカ原産で日本ではブラックベリーと呼ばれています。春になると株から勢いよく蔓(つる)を伸ばして葉を広げ、黒い甘酸っぱい実をつけます。
ジャム、ソース、アイス、お菓子作りと幅広く食べられるブロムベーレはその繁茂力の強さでそこらじゅうで自生し、人が立ち入ることのできないトゲトゲのいばらの茂みを作っています。大きな外敵は立ち入れない、でも熟(う)れた果肉はぽとぽと落ちてくるので、野生化した茂みの中はハリネズミなど小動物のすみかになっているようです。
そんな野生のベリーの茂みはあたり一面甘い香り。熟れた果肉の匂いに引かれて蚊や蜂もやってきます。野苺摘みには虫除けと手足を覆う服を着ましょう。
最後にブルーベリーを。ドイツではBlaubeereブラウベーレ、Heidelbeereハイデルベーレなどと呼ばれているベリーです。家庭で育てられていて実の粒が大きいものもありますが、せっかくですので森の中へ。収穫はBeerenkammベリーコームという櫛のついた道具で枝から実をザッザッと梳(す)き採ります。野生のブルーベリーは湖のそばや風の通る涼しい森の中の岩の多い木陰にこんもりと茂り、小ぶりだけれど美味しくて、何より摘んでいる時に体を満たす森の香りが何よりのご馳走。特別なベリーです。
こうして書いてみた近場のベリーたち、きちんと活かすようになったのにはコロナ禍の背景があります。
ドイツは去年、初夏に感染者の減少を受けて保育園などの施設を再開させたものの、児童や職員に感染者が出たら、接触のあった児童は隔離を余儀なくされていました。リンゼとおいもさんの保育園も例外でなく、感染者が出るたびに自宅待機。買い物にも頻繁には行けませんから買い溜めできない野菜や果物などは常に欠乏状態でした。
そんな時、庭にぼうぼうと生えるがままで、気が向いた時に摘む程度だったベリーに目を向けて、きちんと消費するようになったのです。いつでも買いに行けるコロナ禍前だったら、わざわざ暑い思いをしてグツグツ煮たりしなくても良かったわけです。買ってくれば食べられるのですから。
しかし、子どもと閉じこもっての暮らしには、やることは無いわ、買い物にも行けないわ、冷蔵庫は空っぽだわ。
子ども達と敷地内でできるアクティビティのひとつとして、ベリーの活用を模索し、しまいには葉っぱまで食べるようになった外出禁止の暮らしは、不便なようでいてかえっておかしく、明日はどんなことをしようか、散歩道の草をかたっぱしから食べてみるか! よっしゃ図鑑だ図鑑! と、妙なチャレンジ精神が奮い立っていたあの時の生きようとする力は、今振り返ってみてもたくましいものだったなと思います。
例年通りだったら今年の夏こそはバケーションでどこかへ観光に行ったり、映画を観に行ったりしながら過ごしていたはずでしたが、今年の夏もヨーロッパ全体への感染拡大のようすを見て、我が家は旅行を取りやめにしました。
「こんなはずじゃなかった」「もっといろんな経験をさせてあげられたら」と親が思う横で、庭のベリーを集めてジャムを煮、キャッキャとおたまでアクをすくう子どもたち。
手をうごかし、季節の果物で自分で作る楽しみを少しでも感じてくれていたらいいなと思うのです。