2021年5月12日

拾った羽根を宝物に!ドイツの学芸員さんに聞く保存&観察のしかた【教えて!世界の子育て~番外編・ドイツで出会ったモノ・ヒト・コト】

海外で子育てをするママパパたちにそのようすを伝えてもらう「教えて! 世界の子育て」。その番外編として、ドイツで子育てをする中原さんが出会った「ドイツで出会ったモノ・ヒト・コト」について伝えてくれます。

今回の出会いは「羽根」。ドイツの自然博物館学芸員さんに聞いた、羽根の素敵な保存方法や扱い方などを紹介してくれます。

みつけた! みつけた! 鳥の羽根!

子どもたちの心の琴線はいつだってピンと張られているし、目にうつるものは全て唯一無二の一期一会。ちょっと外を歩くだけで、すぐに何かしらと出会う。

「おかーさん! 見て見て! これみつけたの、持って帰っていい?」そうやって持ち帰ってくる『宝物』。これが増える増える。瞬く間に。
石ころ、木の棒、何かの実、野菜の切れっ端、まつぼっくりに虫の死骸。そして鳥の羽根。

「おんなじような石ころばっかり。こんなに沢山あるなら半分処分しても大丈夫だろう」と、うっかり捨てたら「おかあさん、わたしのちょっとミドリの石ころ、おなまえはトコちゃんっていうんだけど、どこいったの……?」と泣かれてしまうやつ。

拾った羽根を宝物に!ドイツの学芸員さんに聞く保存&観察のしかた【教えて!世界の子育て~番外編・ドイツで出会ったモノ・ヒト・コト】の画像1

宝物、お友達(虫!)、だいじなもの……。毎日何かしら増える

そのなかでも特に扱いに困るのが、生き物系です。

虫の抜け殻や鳥の羽根は、生きているわけではないと分かってはいても、汚れや雑菌がたくさんついていそうだし、苦手な親御さんには家に持ち込まれるのもつらいことでしょう。それでもポケットの中やカバンに忍ばせて、何でも連れて帰ってきてしまうのが子ども……。
みなさんどうしてますか。この、宝物たちの処遇。
今日はその中でも、比較的、親も触るのにハードルが低そうな(笑)鳥の羽根について書きたいと思います。

羽根を持ったら
飛べると思ったんだけど

長女のリンゼがある日、羽根を持って飛ぶ練習をしたいと言い出し、私たち親子はロックダウンの中を時折散歩に出ては、鳥の羽根を拾い集めていました。
そうやって集めていく中で、子どもたちは鳥の羽根にはいろんな種類があることに気づきました。

「おかあさん、このはねはフワフワだね」
「このはねは小さいね」
「これは黒と灰色だ!」
「じゃあ、どの鳥か調べようか」
とはいっても、私に野鳥の知識は無いし、ドイツの鳥の名前もよく知りません。

ハトもカラスもスズメも、日本のとは姿がちょっと違う。名前も違うんでしょう。
どうしたらいいのか、自然博物館学芸員のマルコスに聞いてみました。すると。

・羽根を拾った場所にどんな鳥がいたか観察してごらん。
・その鳥の体がどんな色をしているか、野鳥図鑑などで調べてみるとどの鳥が落とした羽根か分かるよ!
・羽根を拾いたい時は、手を拭くウエットティッシュと、封筒など入れ物を持っていくといい。
・帰ったら手を洗うこと!
という4つのアドバイスをくれました。

虫やダニがついてそう! と思ったけれど、鳥から抜けた時点で離れていくらしい。目視で何もついていなければ、石ころや落ち葉同様に拾っても大丈夫なんだそうです。
かくして私たち3人は羽根を拾っては「これはハトだ」だの「黒いからカラスだ」だの「池のそばだったからマガモだ」などと議論を始め、羽根の『目利き』としてのキャリアをスタートさせたのでした。

心躍るとくべつな羽根

ハトやカラスの羽根でキャッキャと喜んでいた私たちに、それで喜んでいて、満足かい……? と、ほほえんできた羽根がありました。
大聖堂の塔の下をうろうろしていたリンゼが見つけたのは、黒っぽいしましまの羽根! 形もシャープでかっこいい。
それの落とし主はWanderfalkeヴァンダーファルケ(ハヤブサ)でした。

中型の猛禽(もうきん)類ハヤブサは、ハトやスズメなどを餌にしていて、見晴らしのいい高い塔や崖の中腹などの高所に巣を構えます。
自然界では岸壁や岩壁に住むそうですが街中の高層ビルに住むハヤブサもおり、私の街の大聖堂はうってつけな場所という訳です。

ハトやスズメ以外の鳥が街のど真ん中に住んでいることは大きな驚きで、他にどんな鳥がいるんだろうと、興味をかき立てられました。
あなたの街にも、意外な鳥が住んでいるかもしれませんね。

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このいかにも速く飛びそうな格好良い羽根の持ち主を図鑑で見つけた時、私たちは目利きとしてレベルアップしたのでした! 街中の鳥の羽根探しは、落ち葉などが集まるような風の吹き溜まりが穴場です

ハイキングでみつけた「現場」

ある日、ハイキングに出かけた時のこと。私たちはある切り株を見つけました。

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「おかーさーん! ここ!!」と敏いこどもの目

切り株の上には細かな羽毛らしきものが散らばっていますが、夜露に当たったのか濡れて形が崩れ一見ただの汚れに見えます。
しかしここで、羽根拾いの目利きとして修行を積んできた私たちは、見逃しませんでした。

「おかあさん! これ、とくべつなはねだよ!」
リンゼが指差したのは緑と黒の、縞模様が入った羽根!
切り株の上の濡れてぐちゃぐちゃになっていますが、よく見ると、ウグイス色と赤色の羽毛もちらほら見える。これはもしや。
「Spechtシュペヒト(キツツキ)かも!」
「キツツキここで食べられちゃったのかな」
「頭の羽毛まで散らばってるもんね」
「キツネがたべたかな?」
「もうきん(猛禽)かもよ!」
そんな話をしながら私たちは辺りから羽根を拾い集め、封筒に入れて持ち帰りました。

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1・半分みどりで半分シマシマの羽根。色がついているとテンション上がる! 2・先が赤い羽毛 3・ん? ここにも羽根が落ちてる。探してみよう 4・辺りを探したら大きい茶色の羽根がたくさん落ちてた! 大収穫

集めた羽根をどうするか

さて、帰宅すると一仕事が待っています。
宝物の洗浄とコレクション化です。

ケース1
拾ってきた羽根が汚れておらず、形も整っているならば、
1・指でかるくホコリを落とします。
2・お鍋にお湯を沸かします。立ち上る熱い湯気のなかを30秒ほど行ったり来たりくぐらせ熱します。
3・形を整えてしっかり乾燥させましょう。アルコールスプレーなどを併用してもいいそうです。

ケース2
私たちがハイキングで拾った羽根のように、泥で汚れていて形も崩れている場合。こちらは洗って整えます。
1・洗面器などにぬるま湯を溜め、羽根を入れ、液体洗剤を回し掛ける。うちは何となく、おしゃれ着洗い洗剤をチョイス……。雑菌が気になる場合は熱湯で消毒するなどしても良い。
2・羽根を指で押し沈めながら優しく汚れを落とす。泥などが固まっている場合は無理にこすったりしないでしばらく浸け置きます。
3・汚れが落ちたら石鹸水を流し、水を換えてゆすぐ(下図2)。
4・水から上げてタオルで挟み、軽く叩いて水気を切る。洗い立ての羽根はしょんぼりしているけど大丈夫。
5・完全に乾いてしまう前に羽根の形を板状に整える。羽根がどんな構造になっているのか子どもはよく観察している(下図3、4)。
6・もっとしょんぼりしていた小さな羽毛も、洗濯ネットに入れてドライヤーの温風を当てるとふわっふわになる。

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指先で流れを整え、亀裂の入ったところを指で押さえ、揺らすように動かすとくっつくんですよこれが!

一本の板状の羽根をほぐしてみると、たくさんの毛が集まってできていることがわかります。その毛の一本一本をよく見てみると、もっともっと小さな毛が生えていて、それがまるでファスナーのように隣の毛と噛み合っていることで、私たちのよく知る羽根の形になっています。

「これが風をつかまえて飛ぶための秘密なんだよ」とマルコスは教えてくれました。
よくよく考えてみれば、野鳥は雨の中飛んだり泥水の中で遊んだりしているもんな。ちょっと汚れるくらいへっちゃらなんでしょうね。

さあ、きれいになったところで図鑑やインターネットを見て、どの鳥かしらべよう。
この緑色はアオゲラの羽根だ!
アオゲラは緑の体に頭の赤い飾りが映える、綺麗なキツツキです。
大きな茶色い羽は、中型の鷹、ノスリの羽根みたい。
こんなにたくさん羽が抜けているってことは、鷹も何かに襲われたのか、それとも鷹同士で喧嘩でもしたのか。

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とくべつな羽根

今回は『とくべつな羽根』が沢山集まったから、ちょっと『とくべつ』に飾ってみようということになりました。
1・洗って形を整えて乾かした羽根を厚い雑誌などに挟み、上から重石を掛けてちょっと平べったくする(下図1、2)。
2・羽根を画用紙の上に配置する。今回は大きさ順に並べることにした。場所が決まったら羽根の軸に木工用ボンドなど透明になる接着剤を垂らしてしっかり乾燥させ、固定する(下図3)。
3・小さな羽毛は額に入れた時に飛んだりズレたりしないように、あらかじめ紙片などに貼り付けて。
4・IKEAの額に入れてみたよ! ふわふわの水鳥の羽根などは奥行きのある空き箱の中などに飾ると素敵かも(下図4)。

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鳥の羽根は長期間、通気性の悪い箱の中などに放置しておくと虫に食べられてしまうことがあるので、標本の端に防虫剤を置くと更に良いそうです(毛糸のセーターに穴が開いてしまうのと一緒なのだそう)。
コレクションとしてならチャック付きのポリ袋に入れて密閉しておくと良く、見える形でなら、ペン立てに挿したり、紐でつるして飾ったりもできます。こちらなら通気するので虫もつきにくいですね。
集めやすいハトやカラスの羽根は工作の材料用に箱に入れておいたり、羽根ペンを作ったりして遊ぶのに活用しています!

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毛糸やタコ糸のヨリを緩めて(図3)そこに軸を差し込むと簡単につるすことができます。ボンド付けすると散らかりません。鳥の名前が判明したらお手製のタグをつけて自由研究気分です!

「もぐる鳥の羽根はどうなっているんだろう。ペンギンは羽根がはえてるのかな」
「今はどんな渡鳥がやって来ているのかな、見に行ってみようよ」
「双眼鏡ってどうやって使うの?」
「今からの季節は巣の下の卵のカラ集めも楽しいってマルコスが言ってた! いろんな模様があってすてきなんだって」

子どもたちの興味はものすごい勢いで好き勝手に広がっていくから、母も必死で、ドイツ語の図鑑を目をしぱしぱさせながらめくっています。
コンパクトにしまっておける宝物なら、たくさんあっても邪魔にならないし、行く先々で住んでる鳥が違うからレアな羽根集めの楽しみもある!

この地味〜な宝物に、密かに心躍らせる私たちなのです。

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大切なこと
・鳥の羽根を拾う時は、危険な場所、私有地、保護区の立ち入り禁止区域などには入らないようにしましょう。
・知らない虫や死んでいる動物には触らないようにしましょう。
・野鳥の観察は鳥を脅かさないように十分離れたところから、ルールを守って行いましょう。
・鳥のヒナを拾わないようにしましょう。(詳しくはこちらから「野鳥の子育て応援キャンペーン」など参照してください https://www.wbsj.org/「日本野鳥の会HP」)

・必ず手を洗いましょう。

街なかの緑地は渡り鳥にとっては砂漠の真ん中のオアシスのようなもの。実はたくさんの季節の鳥が羽根を休めるために訪れているそうです。「あなたの近くにもきっと、あなたしか出会えない四季折々の鳥が来ているはずですよ!」とマルコスは教えてくれました。

拾った羽根を宝物に!ドイツの学芸員さんに聞く保存&観察のしかた【教えて!世界の子育て~番外編・ドイツで出会ったモノ・ヒト・コト】の画像10今回の海外ママは
中原さん
結婚を機に夫の故郷ドイツに来て10年目。趣味はレストラン巡り、庭いじり、手芸などなど。掃除と片付けも趣味になったらいいのになあ……といつも思っています。6歳と4歳の娘たちがいます。#中原ドイツ子育て Instagram @s_vn
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