2025年1月7日

子育てがうまくいかないのは「インナーマザー」が原因? 思春期以降の子育てで意識したい「4つのバウンダリー」【杉浦さやかの「機嫌のいいママになりたい!」9】

子育てがうまくいかないのは「インナーマザー」が原因? 思春期以降の子育てで意識したい「4つのバウンダリー」【杉浦さやかの「機嫌のいいママになりたい!」9】の画像1

子育ての中での自分の“怒り”の気持ちの大きさに、更年期障害を疑うことからはじまったこの連載。取材を進めるうちに、「育てられかたの影響も大きいのでは」と思うようになりました。

超亭主関白の父の機嫌を見ながら、ワンオペで3人の子育てをしていた母。私たちはよく叱られ、叩かれもして、幼いころは口答えなど許されなかった。標準よりちょっと厳しい、昭和の家庭。

末っ子の私はよくも悪くもほうっておかれ、母とのふれ合いは少なかった印象。そんなふうに自分が多少抑圧気味に育ったことも原因では……と、親子関係の著書も持つ、カウンセラーの大美賀直子さんにお話を伺いました。

「本来子どもは自由にしたい“自然状態”なもの。お母さんは自然状態の子ども3人をコントロールすることに必死で、ギリギリの心境だったでしょうね。夫からのプレッシャーのなか、自分なりに母親として最善のことをしただけなのでは」。子どもにはその葛藤がわからないから、“イライラした怖いお母さん”というインナーマザー像を作り上げてしまうのだそう。「……でもお話を伺ったら、お母さんとのことはもう解決してるんじゃないんですかね」 ――確かに、抑えつけられたぶん長い反抗期を経て、私と母の関係はその後ずっと良好。

「娘さんとケンカが多いのは、杉浦さんが負けず嫌いだからなのかも」 え……私の性格のせい!?

すっかり育てられかたのせいにしていた自分が、恥ずかしすぎる。「もちろん影響は受けていて、すごく自分を通したい勝ち気なところは、お母さん譲りかもしれませんね」本当にひどい毒親の場合は別として、「母親だって人間で、その時点でまだ20~30代の未熟な大人。精一杯だったんだ、とわかってあげないとフェアじゃないですよね」 そう、娘が生まれたあと、母から「子育てを楽しいと思ったことが一度もなかった」という告白を聞き、孤独な子育てだったんだなぁ……と、若かりし日の母を抱きしめてあげたい気持ちになりました。

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ずっとケンカの原因ナンバーワンの“タブレット使いすぎ問題”を相談したら、「自分の育てられかたと違って、自由な関係を目指すなら、もうちょっと自由でいいのかも」自由なはずなのになんだか規定されるから、話が違う! となる。う……たしかに。「まだ未熟で自然状態だから好きなことを優先させるけど、最終的に最善なものを自分で選べるはず。たとえ失敗したって、わが子はきっとリベンジできる、と絶対的な信頼を持てたらいいですね」。

例えば勉強せずに受験に失敗したら、それは子どもの責任。そこからどう感じて挽回するか、見守る……わかっちゃいるけど、つい先回りして言ってしまう。「親も一緒に頑張って成功させるのもひとつの方法だけど、落胆してぎりぎりの気持ちになるのは貴重な体験ですよ」大学で学生のカウンセリングもしている大美賀さん、親が敷いたレールを走ってきてさぁ自立、というとき、“自分で決めることができない”ことに苦しむ若者もいるのだとか。「子どもを信じる力はすごく大切です。心の底から人から信じられると、自分を信じることができるようになりますよ」。

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「“バウンダリー”をしっかり持って付き合うのが、思春期以降大切なこと。“バリア”だと拒絶、壁になってしまうけど、バウンダリーは境界線。ここは私の領域だから土足で踏み込まないでね、と見えない柵をお互いに持って付き合うことです」。

大人になってからの母親との付き合いに悩む人も多く、イラストに描いたように、やはりバウンダリーを意識することが鍵。

自分の中から生まれて、抱きかかえた境界線0からはじまる子育て。少しずつ離れていって、大人になってくるとバウンダリーを持って付き合わないと、お互いが苦しくなってしまうんだな。親子は特に、境界線が曖昧になりがち。自分が親の立場だとつい入りたくなるし……。

特に私がやりがちなのは、“責任のバウンダリー”の侵害。子どもができること(自分で起きる、勉強など)に口や手を出しすぎると、自分で考える機会を奪うことになってしまうそう。

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ひとつ心配だったのが、私と夫にだけあたり散らす娘が、将来のパートナーに同じことをやりそうなこと。すると大美賀さん「いや、それはしないですよ。お母さんだから、外ではわきまえていることも自己表現できる。私はそこは全然心配していなくて、むしろうれしかったですよ」。

ええっうれしい……かぁ。滅多に出せない面を見せられる相手とのコミュニケーションは、確かに人生において貴重なのかも。この話を聞いて、だいぶ心が楽になりました。

取材を受けるにあたり、娘に「私ってどんなお母さん?」と聞いたら、「うーん、しつこい。でも、一生懸命だよね」と言われました。大美賀さんは「見てるじゃないですか! お母さんの小言やケンカは瑣末(さまつ)なことで、子どもは生きかたを見ていますよ。真面目だな、人に優しくしてるな、と本質的なところを捉える力があるんです。そこさえクリアできていれば、多少クセがあったって、ぶつかったって大丈夫」。

ときには本音でぶつかり合うこともあるけれど、まずは“機嫌のいいママ”でいられる日をふやすことが目標。本誌で書いた通り、パーフェクトより“ほどよい母”がいいのだから。1年半にわたり、私たち親子のバトルと成長? を読んでくださって、ありがとうございました!

kodomoe2月号 Vol.9「“ほどよいママ”になりたい!」では、「試合」になりがちな子どもとのコミュニケーションや、「試合」にならない方法とは……をお届けしています。本誌でもぜひお楽しみください♪

大美賀直子さん
おおみかなおこ/メンタルケア・コンサルタント。公認心理師、精神保健福祉士、産業カウンセラーの資格を持ち、セミナー講師など多方面で活躍。専門家がそれぞれのコンテンツを発信する情報サイトAll Aboutでは、「ストレス」と「人間関係」ガイドとして、コラムを連載中。『長女はなぜ母の「呪文」を消せないのか』(さくら舎)など著書も多数。

大美賀直子さん公式ホームページ mentalcare555.com

All About 連載はこちら

杉浦さやか Sayaka Sugiura
1971年生まれ。日本大学芸術学部卒業。在学中よりイラストレーターとして仕事を始める。著書に『えほんとさんぽ』『おきにいりと暮らすABC』『おやこデート』(白泉社)、『おたのしみ歳時記』(ワニブックス)、『ニュー東京ホリデイ』、『すきなもの 楽しいことA to Z -’80s~’90s少女カルチャーブック』(祥伝社)ほか多数。
kodomoeでの連載「おやこ プチプラごっこ」をもとにまとめた書籍『わたしたちの歳時記』(ワニブックス)が12月下旬発売予定。

おやこ プチプラごっこ+plus(web版連載)
https://kodomoe.net/serial/sugiura_gokko/

杉浦さやか新刊プロジェクト(祥伝社)
http://www.shodensha.co.jp/ssp/

杉浦さやかX(旧Twitter)
https://twitter.com/saa_aya

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