ドイツでは夕飯に料理をしない。ママに優しい「カルトエッセン」【我が家のごはん日記/日登美さんちの食卓】
忙しいママにとって、日々の家事の中で悩ましいのがごはんのこと。適度に手を抜きたいけれど、家族には栄養のあるものをバランスよく食べてもらいたい。では、食にかかわるお仕事をしているママたちは、家族のごはんをどうしているの?
kodomoe webで人気の連載「我が家のごはん日記」から、気になるメニューをご紹介。今回は、ドイツ在住の日登美さん。6人の子どものお母さんでもある日登美さんちのある日の食卓から♪
日登美さんちの食卓
<日曜日・夜>
フェジョアーダ(ブラジルの豆料理)
ブラジルに住んでいた数年間で我が家をすっかり虜にしたこのフェジョアーダと呼ばれる豆の煮込み料理は、今や食卓に欠かせないメニューです。フェジョアーダは黒インゲン豆を牛の臓物などと煮込むのが本式のやり方で、一度現地の山奥の祭りに参加して食べた時の衝撃は忘れられません。ブラジルでも一般的には臓物でなく簡単にソーセージなどを一緒に煮込むことが多いこの料理、 我が家でも薫製ソーセージを使ったり、お豆だけでも作っています。
それに定番のコーヴィマンテーガと呼ばれるケールのバター炒め。ドイツでは今の時期グルーンコールと呼ばれるケールに似た葉を使って作ります。そこにファロッファと呼ばれるキャッサバの粉を炒ったもの、細長い米、 オレンジがあればまるでここはブラジル。あぁいつ食べても最高なんです!! 食べ盛りのお兄ちゃんたちにはポークステーキも添えて。みんなが大好きな夕飯です。
<月曜日・朝>
ブリティッシュ風ご飯とオブストサラダ
娘の友達がうちに泊まっていたので、この日はその子のルーツ、イギリス風の朝食になりました。 カリカリベーコン、半熟の目玉焼き、ベイクドビーンズ(オーガニックの缶詰を温めただけ)、サラダ、スペルトのパン。ブラックティー。というシンプルな献立をさらっと食べて学校に行きましたよ。ちょっと重ための食事なのでオブストサラダ(フルーツサラダ)を添えて。
冬なのにマラクジャなど南国のフルーツもたっぷり入れちゃいまして、レモン、蜂蜜、シナモンでしっかりマリネして免疫アップを狙うのが我が家流。蜂蜜はドイツでは体が弱った時に食べます。扱うときは必ず金気のものを避けて。成分が変質するのを避けましょう。
<月曜日・スナック>
残りもののフェジョアーダでなんちゃってメキシカン
ホームオフィスな方がいらっしゃるので、ついついおやつを要求されることも多いわけで。昨晩のフェジョアーダのお豆が残っていたので、トルティーヤチップスにチーズを乗せて焼いた上にたっぷりかけ、トマトとコリアンダーでサルサを作り、サワークリームを添えてスナックに。残りものでも温めるだけでなく、フレッシュなものを加えると最後まで美味しくいただけるのです。
<火曜日・昼>
ビーガントマトソースのパスタ
夫と二人のお昼です。ドイツにはsuppen grün ( スープの緑)という名の香菜セットが必ずどの店でも売っていて、そこには人参、セロリの根、パセリ、パースニップ、リークがセットになって入っています。それを炒めてスープベースにするととってもいい味がでるのです。これはドイツに 来て便利だねぇ!と思ったことの一つ。
我が家ではそれを細かく刻んでトマトソースと煮込んで野菜だけのボロネーゼみたいにしちゃいます。隠し味に 味噌を、そしてすり下ろしたにんじんをたっぷり加えるのがポイント。たくさん作って冷凍してもよし。この日はそれをお昼ご飯にしました。
<木曜日・お弁当、昼>
マクロビオティック冬の特別弁当
水曜日にマクロビオティック冬のレクチャーをしたもので、自分が自分に触発されて(笑)、マクロ弁当を作ってみました。 冬は腎臓をいたわりたい季節。そう言う諸々のうんちくを盛り込みまくった弁当を夫に。家の中でも時には弁当をこさえてみるのもまた一興、気分転換によいのです。私はあえて箱に詰めずお皿盛りでお一人様ランチ気分を。夫は日本のお弁当が大好きなので大喜びでした。
メニューは黒米を混ぜ込んだご飯にしその醤油漬け、小豆かぼちゃ、縞々かぶとアラメの煮物の和えたの、豆腐カツ、ドイツのサツマイモの素揚げ、紫にんじんと切り干し大根と紅生姜の和物、コールラビのプレスサラダ。大きい子どもたちは最近こういうご飯をフルコースでは滅多に食べないのですが、たまに作ると素直に食べてくれます。おちびたちにはアラメの煮物が断然人気でした。
買い物に行かず、あるもので、ドイツで買えるものだけでも美味しくできるマクロビ。クリスマス、甘いものや御馳走が多くなるドイツですので、久しぶりに体がほっとしました。
<金曜日・夜>
手打ちうどんとキムチ入り味噌汁、海藻とツナのサラダ
実は今週は買い物に行っていないので、あるものをごそごそと、な夕食に。
金曜だから時間はある。というわけで末娘とうどんを捏ねて、大人の味噌汁にはキムチをいれてちょっと韓国風に。水につけて元気を取り戻したサラダも食べなくちゃ!と海藻を戻してツナを合わせ自家製の焼肉のたれでサラダに。乾物と粉や穀物、という素材。そして自家製調味料、発酵調味料があれば生きていける。そう確信した金曜の夜でした。
<土曜日・夜>
カルトエッセン
カルトエッセン(冷たい食事)ってご存知ですか? 実はドイツでは基本的にお夕飯に料理をしません。火を使って料理をするのは昼ご飯。そして夜にはカルトエッセン、つまり残り物とパン、ハムやチーズなど冷たい保存の効くものを食べるのが普通なのです。
え?まじ?と最初はドン引きしました。夜に暖かい湯気、おでんの匂いなどが薫ってこないなんてかわいそうな!と。けれどこれ、実は意外と悪くないのです。
夕飯作らないことでできるあらゆる余裕で、いつもと違う豊かな時間を過ごせるのも事実。 我が家はそれでも夕食で全員揃うことが多いので夕飯を作ることが大半ですが、アーベントブロート(夜のパン)といって夜はパンを食べておしまい、ってこともやります。特に子どもが小さいとすごく楽。質の良いなるべく全粒のパンにペーストやサラダ、残り物のスープだけとか、あるもので十分。
今日は日中買い出しに行ったので食料は色々あったのですが、料理する気力がなかったのでこんな時こそアーベントブロートに! ハムやサラミ、オリーブやピクルス、テンペや、枝豆、スプレッドなどを並べて好きに食べてもらいます。子育てママに是非お勧めしたいテクニック、カルトエッセンです。
気がつけばあっという間の4週間でした。みなさまお楽しみ頂けたでしょうか? こうして眺めてみると、季節柄? お国柄? お菓子が多いですね。今回は夫がいたので結構遊んでいるし(笑)、ドイツ人は料理もDIY精神が強いから、1から作るのを楽しんじゃう。けれど一鍋で完結するような食の合理化も重視してる。その辺のバランスは面白いなと思います。
日本の四季とともにやってくる豊富な野菜や食材と細やかな献立。ドイツにはそう言うものがない分、食卓はシンプルで楽かもしれません。だけどやっぱり和食はいいなぁ!と海外にいるほど思ってしまいます。
これからも手間暇という美しい日本の文化を無理なくこちらでも取り入れながら、ドイツで学んだ食の合理化や世界で出会った家庭の味を織り混ぜで、楽しく食卓を紡いで行きたいと思いま す。 連載と同じく2020年ももう終盤。最後までお読みいただきありがとうございました! どうぞみなさま暖かなクリスマス、そしてお年をお迎えくださいませ。
日登美/ひとみ
3男3女6児の母。10代よりファッションモデルとして雑誌、広告等で活躍。その後自身の子育てから学んだ、シュタイナー教育、マクロビオティック、ヨガなどを取り入れた自然な暮らしと子育てを提案した書籍、レシピ本など多数出版。クシマクロビオティックアドバイザー修了後マクロビオティック料理を教え始め2013年から海外在住。ドイツ発祥の自然療法である国際ヒルデガルト協会認定ヒルデガルトヘルスケアアドバイザーを取得。現在はモデルとしてベルリンを中心に worldwideに活躍する傍ら、オーガニック、ナチュラル、ヘルシーをモットーに台所からの食、暮らしと子育てのワークショップを行っている。
YouTube「日登美の子育てチャンネル」で、子育てのあれこれを発信中!
instagram / @hitomihigashi_b
※この記事は2020年の12月にkodomoe webに掲載したものを再編集しています。