久しぶりのお弁当。とても嬉しい【我が家のごはん日記/良原リエさんちの食卓・1】
忙しいママにとって、日々の家事の中で悩ましいのがごはんのこと。適度に手を抜きたいけれど、家族には栄養のあるものをバランスよく食べてもらいたい。では、食にかかわるお仕事をしているママたちは、家族のごはんをどうしているの?
リアルな食卓を写真でレポートする連載、今回からは音楽家の良原リエさんのごはん日記が始まります。著書『まいにちの子そだてべんとう』(アノニマスタジオ)では、幼稚園に通っていた息子さんの日々のお弁当のレシピやポイントを紹介していた良原さん、この夏は、小学校の学童クラブに通う息子さんのためにお弁当づくりを再開したそう。日々のおかずがどんなふうにお弁当につながるの? そのあたりも興味津々です♪
良原リエさんちの食卓 #week1
初めまして。良原リエと申します。音楽を生業にしています。
私にはもうすぐ7歳の息子がいます。息子が幼稚園の頃は、毎日のお弁当づくりが私の大切な仕事でした。小学校に入り、給食が始まると、のんびりと朝を過ごせるようになった代わりに、母親業が減ってしまってちょっと残念な気持ちにもなりました。
しかし、夏休みに入り、学童に通う息子のお弁当生活が復活! これから4週間にわたって、大好きなお弁当づくりとともに、普段のごはんをご紹介できればと思います。地味な手抜き料理が多いのですが、そこにリアルを感じていただけたら!
<月曜日・お弁当>
黒豆ごはん(三分づき。梅干しを入れて炊いた)。鶏じゃが(玉ねぎ、シメジ、醤油、米油)。ズッキーニのソテー(オリーブオイル、塩)。茹でトウモロコシ。生ニンジン。ミニトマト。キュウリの糠漬け。赤紫蘇。
久しぶりのお弁当。とても嬉しい。息子が生まれたときから息子が食べるものを私がほぼ管理してきたので、小学校の給食が始まると知らない誰かに母親業を横取りされたような、そんな気持ちになってしまっていました。またお弁当を作ることができる喜びを、ひしひしと感じます。
だからといって、朝がとても弱いので早起きはできず、ぎりぎりに起きて慌てて作ります。本当に嬉しいのかと自問自答しながら、なんとか時間内に滑り込みセーフで仕上げました。
黒豆ごはんは、前日の夜に仕込みました。終日出かけていて疲れていたので、準備はこれが限界でした。3分づきに精米したお米2合+ひとにぎりの黒豆(乾燥)を入れ、炊飯器の玄米モードで予約。お豆だけで炊くよりも、ごはんと一緒に炊く方が手軽です。 朝起きてから、ズッキーニを米油でさっと焼く間に、玉ねぎ、じゃがいもなどを下処理して、圧力鍋で鶏じゃがを煮込みます。煮込んでいる間に、ごはんを冷まして、生人参、トマト、昨日のおやつに茹でたトウモロコシ、自家製のぬか漬けや赤紫蘇などを詰めます。
おかずができあがったら、冷まして詰め、残りは朝ごはんに。息子は、鶏じゃがを煮るとできる、とろっとした部分をごはんにかけるのが大好きなので、お弁当のごはんにもかけておきます。水分は入れないのがお弁当のルールかもしれませんが、本人の強い希望に応えました。
詰めたお弁当は冷蔵庫の急冷ルーム(熱いものを急速に冷やす冷凍ルーム)に入れてあら熱をとります。なんとか間に合いました。さあ、いってらっしゃい!
<月曜日・夜>
キャベツと鶏ひき肉の炒め物(エノキ、塩、醤油、米油)。茄子とグリーンピースの煮物(エノキ、醤油、オリーブオイル)。キュウリ味噌。蛸のアヒージョ(小ネギ、ニンニク、塩、オリーブオイル)。
夕ごはんは、できる限り簡単に作ります。全力で1日を過ごしている息子は、夕ごはんの席に着く頃には疲れきっているため、食べるより寝たいといった様子です。だから、我が家の夕ごはんは豪華さよりもスピード重視。結果、手抜きかなと思うぐらいの簡単レシピがちょうどいいと感じています。
キャベツと鶏ひき肉の炒め物には、エノキを細かく切って加えています。塩、醤油で味つけて、5分ぐらいで完成。我が家の料理にはあちこちにエノキやシメジが入っています。味付けを基本調味料のみでシンプルにしたいので、旨味成分は必須です。たいていのおかずに3大旨味成分であるグルタミン酸(野菜、昆布など)、イノシン酸(肉、魚など)、グアニル酸(きのこなど)を入れるようにしています。旨味がしっかりあれば、余計な味付けは不要です。
茄子とグリーンピースの煮物は、グリーンピースは瓶詰めのものを使い、さっと煮たもの。こちらにもエノキが入っています。それなりに美味しいと思いましたが、夫には着地点がよくわからないと不評でした。
キュウリ味噌。切って味噌を添えるだけ。夏はほぼ毎日これを食べます。
蛸のアヒージョ。蛸をそろそろ消費しないとならなかったので、オリーブオイルとニンニク、たっぷりの小ネギと5分ほど煮ました。夫のお酒のつまみにと作りましたが、息子にも大好評。なんとお弁当に入れて欲しいとのこと!
<火曜日・お弁当>
とろろのせごはん(五分づき。梅干しを入れて炊いた)。キャベツと鶏ひき肉の炒め物。ズッキーニのソテー。蛸のアヒージョ。茹でオクラの出汁醤油漬け。茹でトウモロコシ。生ニンジン。ミニトマト。葡萄。
約束通り、夕飯から取り分けておいた蛸のアヒージョを。キャベツの炒め物も取り分けておいたもの。他のお友達はみんな、果物を持ってきているよとの情報があり、今日から果物も添えました。キャベツの炒め物も息子の大好物なので、好きなものがいっぱいのお弁当になりました。予想通り、めちゃくちゃうまかった~と空っぽのお弁当箱が帰ってきました。この言葉が聞けて私もとても嬉しい。お弁当つくりの醍醐味ですね。
<火曜日・夜>
ニラチヂミ(鶏ひき肉、えのき、中力粉、塩、米油)。茹でブロッコリーのおかか醤油和え。フライドポテト(米油)。キュウリ味噌。ミニトマト。
最近、息子と映画を見るのが楽しみのひとつです。しかもまだひらがなしか読めないというのに、字幕の映画にもつきあってくれます。我が家にはテレビがないので、何かを見ながらごはんを食べることはないのですが、夏休みだし、たまにはいいかなと、DVDを見ながらの夕ごはんになりました。この日に見たのは「School of Rock」。吹替版もあり、家族で楽しめる映画ですよ。
夕ごはんは、翌日のお弁当のことを頭の片隅におきつつ、映画を見ながらでも食べやすいおかずにしました。フライドポテトは冷凍食品専門店のピカールのもの。BIO(オーガニック)のフライドポテトがあるので愛用しています。
キュウリ味噌とミニトマトは息子が用意してくれました。肘をついて食べていますね。お行儀が悪くてすみません。
<水曜日・お弁当>
トウモロコシと海苔のせごはん(五分づき。醤油がけ。梅干しを入れて炊いた)。インゲンの豚肉巻(醤油、米油)。ズッキーニのソテー(塩、米油)。ニラチヂミ。茹でブロッコリーのおかか醤油和え(白すり胡麻)。茹でオクラの出汁醤油漬け。生ニンジン。ミニトマト。キウイ。
トウモロコシと海苔をごはんにのせ、醤油をかけて食べる、というのは息子考案のレシピ。この3つの組み合わせは最高なのだそうで、この時期になると自分でイソイソと作っています。
インゲンの豚肉巻きは、少しだけ豚肉が残っていたので作ったもの。息子曰く、お弁当のおかずの中で一番好き!なのだそうで、夏休み中にもう一度ぐらい作ろうかなと思います。
茹でブロッコリーのおかか醤油和えは、水分が出やすいので、水気を切ったあとに白すり胡麻を和えて水分を吸わせつつ、あわせて風味も加えます。あとは、昨日の夕ごはん時に取り分けて置いたものなどを入れて完成!
<水曜日・夜>
棒棒鶏のようなもの(鶏肉、キュウリ、豆モヤシ、紫蘇。胡麻ダレは、花生醬 [ピーナッツバター] +出汁+醤油+酢+白すり胡麻)。枝豆(塩)。冷やしトマト。
夫から、さっぱりしたものが食べたい!というリクエストがあったので、冷蔵庫を眺め、あるもので棒棒鶏のようなものを作りました。本来の棒棒鶏にはなかったよなと思いつつ、一緒に食べたら美味しいだろうと豆モヤシを添えました。
胡麻ダレを息子に出すのが初めてだったので、全体にはかけず、それぞれでかけるスタイルに。花生醬は春に家族旅行で台湾へ行った際に、名前が素敵だなと思い、何かはわからずに買ったもの。大人は胡麻ダレに、同じく台湾土産の辣椒醬(唐辛子ソース)をそれぞれ好みの量を加えて。
切って出すだけのトマト、茹でるだけの枝豆は夏の定番です。たいてい農家さんから取り寄せています。トマトや昨日のとうもろこしは、岐阜の千空農園さんから届いたもの。旬のお野菜なら、スーパーよりも農家さんから買ったほうが安いこともあります。応援したい農家さんに直接お金を渡せることがとても嬉しい。自分でできないことをしている方の技術や物を、お金で交換していただく。この気持ちをいつも忘れないでいたいです。
<木曜日・朝>
ごはん(五分づき)。わかめの味噌汁。納豆。キュウリの糠漬け。
朝ごはんはできるだけ簡単に作ります。ごはんと味噌汁、あとは納豆、漬物ぐらいです。お米は岡山の蒜山耕藝の自然米。旨味がしっかりとある、とても美味しいお米です。新米の時期には、家族全員が唸りながら食べるほど。お米は毎日食べるものだから、これは美味しい!と家族全員が納得したものを買おうと決めています。
味噌汁は、名島屋の出汁パックで出汁を取り、乾燥わかめを入れ、手前味噌を加えて作ります。手前味噌は、私は3年ものぐらいの濃いめの味が好きなのですが、夫や息子は甘めが好みなので、まだ甘さがはっきりと残る今年の味噌7割+3年ものを3割ぐらいを合わせて使っています。
<木曜日・お弁当>
赤紫蘇ごはん(七分づき)。茹で鷄の醤油麹和え。ニラチヂミ。茹でブロッコリーおかか醤油和え(白すり胡麻)。茹でオクラの出汁醤油漬け。キュウリの糠漬け。コリンキーのピクルス(米酢、水、メープルシロップ、ベイリーフ、塩)。生ニンジン。ミニトマト。葡萄。パイナップル。
いよいよ本格的な暑さになってきました。ごはんには、刻んだ赤紫蘇を全体的に混ぜます。ごはんの腐敗を防ぐのには、梅干しや赤紫蘇、梅酢がベスト。これに勝るものはないと思います。赤紫蘇は、自家製の梅干しのストッカーにたんまりとあります。
ところで梅干しは、ここ数年は面倒だったり、タイミングが合わなかったりで、干さずに漬けっぱなしにしています。干さないと梅肉がやわらかくなるのに時間がかかりますが、3年ぐらい待てば、ちょうど良い塩梅に。なので、今は2016年の梅干しを食べています。
茹で鶏は、昨晩の棒棒鶏から。醤油麹で和えて味付けを。醤油麹は、醤油と米麹を混ぜておき、時々混ぜて一週間ほどでできあがり。混ぜて、ほぼ放置するだけでできる簡単さながら、コクがあってとても美味しい。常備しています。
<木曜日・夜>
冷やしうどん。納豆。大根おろし。シメジの醤油炒め(米油)。海苔。キュウリの千切り。ミニトマト。自家製麺つゆ(出汁、醤油)。
夫が仕事でいないので、息子と二人で夕ごはん。二人だけで夏とくれば、冷たい麺の一択です。夫が冷たい麺が苦手だけれど、私たちは大好物だからです。お父さんいないの?じゃうどんにしよ!と息子の提案でメニューが決まりました。ビュッフェみたいにいろいろおかずをのせるのがいいなとの案にも乗り、ありものでさっと揃えて。
麺つゆは、味噌汁で使っている出汁に醤油を加えただけのもの。必要なときにその都度作ります。ああ、やっぱり夏はこれですね。美味しくいただきました。
<金曜日・お弁当>
梅干しごはん(五分づき)。茹で鶏の醤油麹和え。厚揚げとツナの煮物(シメジ、醤油)。茹でブロッコリーのおかか醤油和え(白すり胡麻)。茹でオクラの出汁醤油漬け。生ニンジン。ミニトマト。キュウリのぬか漬け。デラウェア。
朝、一品足りないなと思い、さっとできる煮物を。残りは朝ごはんにいただきました。 茹でブロッコリーや茹でオクラは日にちが経っているので、朝ごはんに食べて確認してから入れました。味をしっかり付けているせいか、腐敗する気配もなく、美味しくいただきました。
<金曜日・昼>
カフェオレ。
実は、私は昼ごはんをあまり食べません。友人や仕事の仲間とタイミングが合えば、楽しい時間を共有することを優先して食べますが、一人のときは食べなくてもいいかなと思っています。というのも、1日2食のほうが圧倒的に体の調子がいいからです。朝や夜は息子と食べることが大切なので、最近は昼を抜くことが多くなりました。
この日は仕事の打ち合わせで、珍しくカフェラテを。普段はブラックコーヒーですが、どうやらカフェラテがウリのお店のようなのでオーダーしました。目の前で模様を作るのを見せてくれ、店員さんとの会話も楽しい時間に。牛乳は得意ではないのですが、おかげで美味しくいただけました。
<土曜日・朝>
カリカリごはん(にぼし粉、白胡麻、小ネギ、塩、醤油、米油)。キュウリのぬか漬け。とろろ昆布汁(醤油)。
余ったごはんは冷凍して、休みの日に炒めごはんにします。息子がもっと小さい頃、炒めたごはんがカリカリして美味しい!と言ったことから、我が家では「カリカリごはん」と呼んでいます。カリカリごはんには、カルシウム補給を期待して、にぼし粉をたっぷり入れています。
夫はしばらく海外へ。二人分の味噌汁を作っても余ってしまうことが多いので、とろろ昆布に醤油にお湯を入れただけのかんたん汁にしました。
<土曜日・夜>
父の一周忌でした。法事のあと、父の大好きだった中華街のお店で食事を。小さな頃から、家族で食事といえばいつもこのお店でした。父の会社の忘年会も、父や母の誕生日会も、私、妹、弟の結婚相手の顔合わせも、全てこのお店で。とにかくみんなでごはんを食べようとなれば、ここへ来たものでした。父の大好きなお店で集まり、父が好きだったメニューをあれこれ頼んで、お父さんいつも同じメニューばっかりだったよねえ、なんて話をしながら。法事ももちろんですが、こんな時間が一番の供養になるのかなと思った夜でした。
よしはらりえ/音楽家。アコーディオニスト、トイピアニスト、トイ楽器奏者として、映画をはじめ、TV、アニメ、CM、ミュージカルなどの演奏、制作に関わる。トイ楽器を用いた子ども向けコンサート、ワークショップなども行っている。著書に『まいにちの子そだてべんとう』『たのしい手づくり子そだて』(アノニマ・スタジオ)『トイ楽器の本』(DU BOOKS)など。