卒園。子どもはもちろん、見守る大人だって心が揺れるこの季節。絵本『おめでとうかいぎ』をご紹介【親子の読み聞かせに。今日の絵本だより】
ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめするweb連載「親子の読み聞かせに。今日の絵本だより」。過去にご紹介した絵本の中からピックアップ。親子で一緒にこんな絵本はいかがですか。今回は、卒園シーズンに読みたいこちらの絵本をご紹介します。
おめでとうかいぎ
『おめでとうかいぎ』
浜田桂子/作 理論社 1518円
卒園がテーマのこちらの一冊、『おめでとうかいぎ』をご紹介します。
今日は、ゆうきくんの卒園の日。
「おめでとう。
いよいよ いちねんせいだね」
ってお祝いされるけど、一年生って、一体どんな感じなんでしょう。
これまでとは違って、一人で通う小学校。
「せんせいは やさしいかなあ。
あたらしい ともだちは できるかなあ。」
お布団の中に入っても、いろいろ気になるゆうきくん。
そこへ、
「ゆうきくん、ゆうきくん」
と、どこからか呼ぶ声が。
声の主はなんと、ゆうきくんの黄色い通園バッグでした。
「こんばんは。
これから かいぎを ひらきます。
ゆうきくんは とくべつゲストなので、
しゅっせきしてくださいね」
ぽかんとしているゆうきくんのもとに、
「みなさん、おはいりください」
と通園バッグに呼ばれて、いろいろなものがいっぺんにやってきました。
ゆうきくんが赤ちゃんだった頃の帽子と服、そして哺乳瓶。
初めてお散歩した時の靴、おむつ卒業のためのトレーニングパンツ。
ゆうきくんの成長のステップごとに、ともに過ごした仲間達。
みんなみんな、こんなに大きくなったゆうきくんに感激して、次々にうれしそうに思い出を語ります。
今までの毎日に「さようなら」、そして、新しい日々に「はじめまして」。
子どもはもちろん、見守る大人だって、心が揺れるこの季節。
「さようならは、
うれしい さようなら、なんです。」
という通園バッグの言葉には、小さかった頃を懐かしむ大人の方がはっとするのではないでしょうか。
子どもの相棒達からの誇らしい「おめでとう」に包まれて、新しい春に踏み出す勇気をもらえる物語です。
『おめでとうかいぎ』は、本連載でも以前にご紹介した『まよなかかいぎ』シリーズの第3弾。
第1弾の『まよなかかいぎ』では、毎日のびのび楽しそうな小学生男子のゆうきくん。
前日譚となる『おめでとうかいぎ』で、その入学前のひそかな不安を知って、私も親戚のおばちゃんのように勝手に涙、涙です……。
第2弾の『るすばんかいぎ』もあわせて、ぜひ3冊ともお楽しみください。
選書・文
原陽子さん
はらようこ/フリー編集者、司書、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。
※こちらの記事は2021年3月にウェブ掲載したものを再編集しています。
