『ともだち』【親子の読み聞かせに。今日の絵本だより 第362回】
kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。
こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子の読み聞かせにこんな絵本はいかがですか。
『ともだち』
くすのきしげのり/作 よしむらめぐ/絵 小学館 1650円
9月23日は、手話言語の国際デー。
ニュース画面などで目にすることも増えた手話、少し気になるけれど、よくわからないままという方も多いのではないでしょうか。
そんな方にちょうどおすすめの絵本、『ともだち』をご紹介します。
隣のおうちに、引っ越してきた男の子。
少し恥ずかしいけど、みずきは思い切って声をかけてみました。
「こんにちは」。
でも、何度ごあいさつしても、その子はしらんかお。
「こ・ん・に・ち・は、わたし……」
とびきり大きな声で言いかけたら、ようやく気づいた男の子は、にこっ。
黙って笑ったまま、両手の人差し指を何度も何度も曲げました。
(わたしが ごあいさつを してるのに、なに やってるの?)
納得できないみずきが思わず、いーっと意地悪な顔をしたら、男の子は驚いて家の中へ。
気持ちがおさまらずにお母さんに話したら、玄関のチャイムが鳴りました。
あの男の子と、お母さんとお父さんがあいさつに来たのです。
男の子はまた、黙って両手の人差し指を曲げました。
そうしたらみずきのお母さんも、
「はい。こんにちは」
と、両手の人差し指を曲げました。
男の子の名前は、しゅんいちくん。
しゅんいちくんは、耳が聞こえません。
お母さんに聞いたら、両手の人差し指を曲げるのは、手話で「こんにちは」の意味。
しゅんいちくんは、みずきに一所懸命「こんにちは」とごあいさつしてくれていたのです。
それがわかったみずきは、少し泣きそうになりました。
そして、
「おかあさん、『ごめんなさい』って、
しゅわで どうやるの?」
このお話を読んだら、「こんにちは」と「ごめんなさい」の手話を、すぐに真似してみたくなるはず。
手話をこんなふうに自然に試せるきっかけ、かなり貴重です。
後ろの見返しでは、「ありがとう」や「うれしい」「わかりました」、20の手話をみずきとしゅんいちくんが教えてくれますよ。
そうそう、タイトルの「ともだち」を表す手話も、あったかくて素敵なんです。
選書・文 原陽子さん
はらようこ/フリー編集者、司書、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。