『どうぶつみずそうどう』【親子の読み聞かせに。今日の絵本だより 第360回】
kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。
こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子の読み聞かせにこんな絵本はいかがですか。
『どうぶつみずそうどう』
かじりみな子/作 偕成社 1650円
8月1日は、水の日。
水の大切さへの理解と関心を深める日として、昭和52年(1977年)から設けられ、平成26 年(2014年)施行の水循環基本法において正式に法律で制定されました。
水の日から始まる8月1日から7日の一週間は、水の週間。
このタイミングに読むのがぴったりの一冊、『どうぶつみずそうどう』をご紹介します。
大勢の家族と米作りをして暮らしている、ダルマガエルのとうきち。
ナマズのたいしょう、イシガメのがんじいと力を合わせ、川からたんぼに水をひく用水路を作ったおかげで、前よりも米作りがしやすくなりました。
後からまわりに暮らし始めたイタチのおりょうや、カニのもくずは、用水路がないので川から桶で水をくむため、力仕事に一苦労。
自分たちのたんぼにも水をひきたいと、用水路をせきとめ勝手に溝を掘って、水の流れを変えてしまいます。
さらに下流にはサギやエビの新しい村もでき、おまけに厳しい日照り続きで、みんなが水の奪い合い。
用水路の水が止まってしまったため、とうきちがやむなく古い桶で水を運んでいたとき、桶の穴から水まきのように水がもれてしまいます。
「まてよ……」
これをもとに考えれば、みんな公平に水をわけられる仕組みができそうな……。
とうきちが思いついたのは、農業用水を自然の力で平等にわける「円筒分水」のしかけ。
実際に大正時代に発明され、昭和の初め頃から全国で使われるようになり、この発明のおかげで水をめぐる争いが減ったといいます。
円筒分水による利水が『どうぶつみずそうどう』のテーマのひとつですが、たんぼの米作り、さまざまな種類の生き物、村人同士の意見の違い、それを乗り越えて力を合わせることなど、物語の中にキーワードがもりだくさん。
これはきっといろいろな視点から、何度も繰り返し楽しめる一冊。
なにしろ、カエルもイタチもカニもアユも、みんなの和服姿がとても自然!
正直者、ちゃっかり者、力持ち、小さい者、それぞれの個性も楽しい、創作昔話です。
選書・文 原陽子さん
はらようこ/フリー編集者、司書、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。