『そつえんセブン』【親子の読み聞かせに。今日の絵本だより 第355回】
kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。
こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子の読み聞かせにこんな絵本はいかがですか。
『そつえんセブン』
もとしたいづみ/作 ふくだいわお/絵 世界文化社 1320円
3月もそろそろ、卒園シーズン。
「卒園」と聞くと大人はついしんみりしがちですが、当の本人、子どもたちは意外にそうでもなかったりしますよね。
特にはじめて卒園式を体験する子にとっては、「卒園」と聞いてもなんだかよくイメージできないもの。
『そつえんセブン』はそんなときにもぴったりな、卒園式の準備から当日の式の流れまでが楽しくわかるお話です。
「なんだ? あれは!」
園庭から見上げる空に、飛んでくる人影が。
「とりだ! ひこうきだ!
ながれぼしだ!」
「いいや、そつえんセブンだ!」
みんなの前にさっそうと降り立ったそつえんセブン、
「わーっはっはっは。これから そつえんしきの じゅんびの ために、
ときどき くるから よろしく!」
と、いきなり張り切っています。
園のみんなはそんなセブンに驚くこともなく、卒園式の服を買ってもらったことや、先生がお祝いの準備をしていることをおしゃべり。
そして、
「ねえ、わたしたちも おかあさんや せんせいが
よろこんで くれる こと、なにか できないかなあ?」
と、セブンと一緒にあれこれ話し合い、内緒でありがとうカードを作ることにしました。
作業の合間も、けんかしたり、ちょっとしんみりしたり、学校が楽しみになったり、卒園前にいろんな気持ちを行ったり来たり。
そしていよいよ、卒園式の当日。
セブンも正装して空から飛んできました。
緊張しながらの入場、ひとりずつの卒園証書授与、みんなの歌になると
「これ きくと、わたし ないちゃうんだよなあ」
とハンカチを出すセブン。
堂々と歌い終えたみんなは、ありがとうカードも大人たちにサプライズでプレゼントして、大満足。
「みんな、そつえん おめでとう!」
と、セブンも笑顔で空に飛び立っていきます。
お話の中でみんなが歌った(セブンが泣けちゃうという)卒園ソング「ずっとずっとわすれない」は、絵本のカバー袖についたQRコードから実際に聞けるようになっています。
本の一番最後には、絵や言葉、写真を残せる思い出ページもあって、愉快なお話を楽しむだけでなく、一冊まるごと卒園記念品にできそうな絵本です。
選書・文 原陽子さん
はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。