2023年1月14日

『おもち』【親子の読み聞かせに。今日の絵本だより 第342回】

kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。
こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子の読み聞かせにこんな絵本はいかがですか。

『おもち』
彦坂有紀・もりといずみ/作 福音館書店 990

皆様、お正月におもちはたくさん食べましたか?
鏡開きも過ぎましたが(日付は地域によって異なることもあるそうです)、いろんなアレンジでおもち消費に努めているご家庭も多いでしょうか。
前回に続けて、今回も第15回MOE絵本屋さん大賞2022部門賞「ファーストブック賞」から、1冊をピックアップ。
第3位を受賞した『おもち』をご紹介します。

「おもちを やきましょう」
表紙を開くと、焼き網がのっている火鉢がひとつ。
網の下では、あかあかと火がおこっています。
「あみの うえに
 おもちを のせて
 さあ やこう」
角もちをふたつ、丸もちをひとつ、おはしで網にのせました。
「じりじり じりじり」
おもちがだんだん熱くなって、
「ちりちり ちりり」
ほんのり裏が焼けてきて、
「ぱり ぱり ぱり」
丸もちをおはしで持ち上げてみたら、網の模様にこんがりと、おいしそうな焼き色がついています。
ひとつずつひっくり返して、反対側も焼きましょう。

おもちが焼けて、ぷうっとふくらんで。
子どもの頃からよく見ているおなじみのシーンですが、こうして最初からおもちのすぐそばで、耳を澄ませて、じいっと見つめてみると、それはまるで生きものの成長のようにドラマティック。
「いい においが してきたよ」
という言葉に、思わす「うんうん」とうなずいて。
パンやケーキ、数々のおいしい食べもの絵本でおなじみの彦坂木版工房(彦坂有紀さん・もりといずみさん)の木版画が、この作品でも、おもちのおいしさをまっすぐに届けてくれます。
全部焼けたら、いそべやき、きなこもち、あんこもちにからみもち、どれにする?
「あきちゃった」なんて思っていても、やっぱりまたおもちが食べたくなる絵本です。

 

選書・文 原陽子さん
はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。

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