『クレーンからおりなさい!!』【今日の絵本だより 第320回】
kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。
こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子で一緒にこんな絵本はいかがですか。
『クレーンからおりなさい!!』
ティベ・フェルトカンプ/作 アリス・ホッホスタット/絵 のざかえつこ/訳
フレーベル館 1540円
9月30日は、クレーンの日。
1980年(昭和55年)に制定、日付は1972年(昭和47年)のこの日に「クレーン等安全規則」が公布されたことが由来と、なんと半世紀近くの歴史がある記念日なのですね。
そんなクレーンの日にこちらの一冊、『クレーンからおりなさい!!』をご紹介します。
工事現場を見るのが大好きなバートは、毎日、柵の外から大きな機械を眺めています。
ロードローラー、コンクリートミキサー、クレーン。
「ぼくも あんなきかいを うごかしてみたいなあ」。
そんなある日、意地悪なハンスとケースがやってきて、バートに言いました。
「おれたちは さくの なかに はいっても へっちゃらだけど、
ちびっこの バートには むりだろ」
バートはもちろん、毎日工事のおじさんに言われているので、勝手に中に入ってはいけないと知っています。
でもそのときバートは、ハンスとケースの向こう側、遠くに何かを見つけました。
そして少し考えて、
「わかった。じゃあ ぼく、なかに はいる」
すると、早速ロードローラーのエンジンをかけて、工事現場から道路に出ると、停まっていた車をぐしゃん!
お次はコンクリートミキサーに乗って、コンクリートを流してどろろーん!
それからクレーンの運転席に登って、駆け付けたパトカーを釣り上げてぐいーん!
突然の、豪快すぎるやりたい放題に、みんなも読者もあっけにとられてしまいます。
ようやくクレーンから降りたバートに、おまわりさんが怖い声で
「いったい、なにが あったんだい?」
と詰め寄ると……。
それからのバートの説明に、なーるほど!
これはもしかしたら、文字を追うことに集中しがちな大人よりも、絵をすみずみまでよく見て楽しむ子どもの方が、先にその理由に気がつくかもですね。
謎解きは、読んでからのお楽しみ。
ハラハラドキドキからのハッピーエンドがあっぱれ、見事に痛快なクレーン絵本です。
選書・文 原陽子さん
はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。