『ふーってして』【今日の絵本だより 第312回】
kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。
こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子で一緒にこんな絵本はいかがですか。
『ふーってして』
松田奈那子/作 KADOKAWA 1320円
暑い夏、おそと遊びは限界。
でもおうち遊びもすでにネタ切れ……と、この時期にお困りのママやパパも、多いのでないでしょうか。
今回は、そんなご家族に救いの手を差し伸べてくれる一冊、『ふーってして』をご紹介します。
一番最初のページには、
「きいろの いろみず ぽとり
ねえ ふーって して」。
白い紙に落ちた黄色の色水の丸が、ページをめくると、放射状に線を広げて
「あっ
たいよう」。
空に輝く、太陽になりました。
次の見開きには、黄色の色水の丸の下、横一列にいくつも並んだ、緑の色水の丸。
「みどりの いろみず
ぽと ぽと ぽとり
ねえ ふーって して」。
ページをめくると、黄色の色水の丸は、再び太陽に。
緑の色水の丸はみんな、思い思いに線を伸ばして
「あっ
くさが はえたよ」。
太陽に向かって元気に伸びる、草に変わりました。
絵本に向かって息を「ふーっ」とすると、太陽や草になるだけでなく、ハリネズミの針が現れたり、ネコのひげがぐーんと伸びたり。
小さな丸や点だった色水が、ページの中で生き生きと伸びたり、広がったりします。
自分が起こしたアクションで絵本の中に楽しい変化が起きる、参加型の絵本。
でも、お楽しみはさらにこれから。
巻末には、「ふーって してみよう!」と、オリジナルの色水遊びの解説がついています。
自分で好きに描いた絵の上に色水をたらして、「ふーっ」。
正解のない、偶然性を楽しむ色水遊び、夏休みにぴったりだと思いませんか?
でも、「自分で好きに描いた絵」というのがまず難しい……という大人も、ご心配なく。
KADOKAWAの児童書ポータルサイト「ヨメルバ」から、『ふーってして』オリジナル<ふーってしてみようワークシート>がダウンロード可能です。
『ふーってして』でお絵描き遊びに目覚めたら、同じ松田奈那子さんによるシリーズ続刊『ぱったんして』(KADOKAWA)もおすすめですよ。
親子でのびのび、自由なアート遊び。
大人もひととき心を解放して、どうぞゆっくりお楽しみください。
選書・文 原陽子さん
はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。