『はなちゃん おとなになります』【今日の絵本だより 第287回】
kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。
こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子で一緒にこんな絵本はいかがですか。
『はなちゃん おとなになります』
千葉智江/作 小学館 1430円
新入園、進級、新入学。
4月のはじめは、子どもの成長を改めて実感する節目の時季ですね。
『はなちゃん おとなになります』も、小さなはなちゃんの大きな一歩がまぶしく思える一冊です。
「はな、おとなに なるんだもん」
が、近頃のはなちゃんの口癖。
でも、おねえちゃんは言います。
「はな、おとなに なるにはね
いろんなことが できるように ならないと。
まずは、くちぶえが ふけること」
おねえちゃんの口笛は「ピィ~♪」、はなちゃんが真似すると「ひゅ~…、ひゅ~」。
あっ、「ピィ…」って、ちょっとだけ吹けました。
でも、おねえちゃんいわく、まだまだ足りないらしいのです。
大人になるには口笛だけじゃなく、リボンを上手に結べたり、ひとりでバスに乗れないと。
そこではなちゃんは、初めてひとりでバスに乗ることにします。
行先は3つ目のバス停、ママがいる病院のそば。
おねえちゃんは、自転車で先に行って待っていることに。
さあ、はなちゃんは無事にひとりでバスに乗り、ちゃんと降りられるのでしょうか……?
ひとりで初めてバスに乗るなんて、小さな子には大冒険。
席に座ってポシェットのひもを握りしめ、緊張混じりに、でもしっかり前を見つめているはなちゃんの姿に、「がんばれー!」と手を振りたくなります。
はなちゃんがどうしてそんなに大人になりたいのか、ラストでわかるその理由に、思わずほろり。
現在発売中のkodomoe4月号では、「泣ける絵本」特集で『はなちゃん おとなになります』をはじめ、子どもの成長に思わず涙がこぼれてしまうような絵本をたくさんご紹介しています。
一歩一歩大きくなっていく子どもたちの姿、それを見守る喜びを、ぜひたっぷり味わってください。
選書・文 原陽子さん
はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。