『そだててみたら…』【今日の絵本だより 第279回】
kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。
こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子で一緒にこんな絵本はいかがですか。
『そだててみたら…』
スギヤマカナヨ/作・絵 赤ちゃんとママ社 1320円
発売中のkodomoe4月号「季節の絵本ノート」では、今の時季にちなんで「たね」の絵本を5冊ご紹介しています。
今回ご紹介する『そだててみたら…』も、たねまきのお話。
最近発売になったばかりの、ピカピカの新刊絵本です。
ぼくの家の近くに新しくできたお店は、おじいさんがやっているたねやさん。
ちょうど学校の宿題で、たねを育てて日誌をつけることになったぼくは、たねやさんを訪ねてみます。
野菜や花のいろんなたね、種類が多すぎて決めきれないぼくが、最後に見つけたのは「おたのしみ 話のたね」。
見たこともないその不思議な形のたねに、ぼくは「たねたん」と名前をつけて、育てることにしました。
植木鉢にまいて、芽が出てからは大事に大事に、いつも日当たりのいい場所を探して運んで、水も肥料もせっせとあげて。
でもなんだか、たねたんの姿はひょろひょろ。
たねやさんのおじいさんに相談してみたら、
「そりゃ、手をかけすぎじゃな」
そして、
「だいじなことは、なんでもかんでも手を出さずに
しっかり見ることだ。
見ていると、わかってくるものさ」
ここから先は、子育て世代にとっては本当に金言ばかりなのです。
中でも私の胸に一番ぐっと来たのは、あまり立派でないたねたんの育ち方が、自分のせいかと気にするぼくに、おじいさんがかけたこの言葉。
「うまくいかんこともある。
ただ、そんなふうになやむのは、
いっしょうけんめい そだててきた しょうこだ」
ぜひ実際に中を開いて、心にしみる数々の言葉を味わってください。
作者のスギヤマカナヨさんは、あとがきの最後にこう書いています。
「あらゆる『そだてるもの』と『そだつもの』に心からのエールを込めて!」
親子で一緒に種まきがしたくなる、芽吹きの春が楽しみになる一冊です。
選書・文 原陽子さん
はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。