『くりちゃんとピーとナーとツー』【今日の絵本だより 第257回】
kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。
こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子で一緒にこんな絵本はいかがですか。
『くりちゃんとピーとナーとツー』
どいかや/作 ポプラ社 1078円
12月も、もうすぐ後半。
そろそろ「大掃除」という言葉が気になる頃ですね。
大掃除の絵本、というわけではないのですが、「おそうじ」や「お片付け」と聞くと私が思い出す絵本はこちら、『くりちゃんとピーとナーとツー』なのです。
ハムスターのくりちゃんがある日、おうちでゆっくり本を読んでいたら、
「トン トン トン」
とドアを叩く音がしました。
「くりちゃん、こんにちはー!!」
と、にぎやかに飛び込んできたのは、いとこのピーとナーとツー。
さあ、この子たちが来ると大変です。
「くりちゃん、ほん よんでー!」
と、絵本をたくさん出してきます。
「くりちゃん、おえかきしよー!」
と、画用紙と色鉛筆を広げます。
「くりちゃん、むし いっぱーい!」
と、持ってきた虫かごを開きます。
きれいに整えられていたくりちゃんのお部屋は、あっという間にぐちゃぐちゃです。
いつもニコニコのくりちゃんも、これにはちょっと困り顔。
この床一面の散らかりっぷり、お子さんがいるおうちでは絶対、うんうんうんとうなずくことでしょう。
「だけど、ピーと ナーと ツーの
よい ところは、
きちんと おかたづけ できる ところ。」
まず、お部屋の中を飛んでいるちょうちょやとんぼを、窓から外に逃がします。
本は、本棚に戻します。
たくさん描いた絵は、ちゃんとそろえて重ねます。
床をはいて、テーブルもふいて、お部屋はみるみるきれいになりました。
いや、わかってますよ、みんながみんなピーとナーとツーみたいに、自分からきちんとおかたづけできるわけではないことは。
大人の自分でも、なかなかこんなふうにはできません(笑)。
でも、ピーとナーとツーみたいににっこり笑顔で、目の前のものをひとつずつ片付けていけば、きっと大丈夫。
散らかったり片付けたりの繰り返し、時にため息をつきたくなっても、毎日はきっとよきもの、楽しいもの。
どいかやさんの絵本はいつでもそんなふうに心を明るく照らしてくれる、昔ながらのよき絵本の文法を、すこやかな魔法を持っているように思うのです。
選書・文 原陽子さん
はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。