2021年10月18日

『たかこ』【今日の絵本だより 第245回】

kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。
こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子で一緒にこんな絵本はいかがですか。

『たかこ』【今日の絵本だより 第245回】の画像1『たかこ』
清水真裕/文 青山友美/絵 童心社 1430円

前回の『はにわくん』は、埴輪のはにわくんが突然学校に転校してくるお話でしたが。
ご紹介しながら、もうひとつ思い出しました。
いにしえの時代からの、不思議な転校生のお話を。
こちらの『たかこ』です。

「てんこうせいの たかこさんです。
 みんな なかよく しましょう」
と、先生が転校生を紹介します。
「せんせい。でも、たかこさんの
 かおが みえません」
十二単に長い黒髪の女の子は、扇で顔を隠しています。
「たかこさんは、
 はずかしがりやさんのようです」
と、先生。
隣の席になったぼくが
「よろしく」
と言うと、たかこは
「こころやすく ならむ」。
ぼくが
「どうして へんな ことばなの?」
と尋ねると、
「いと はづかし」
と、また扇で顔を隠してしまいます。

たかこがちょっと変わっているのは、服装や言葉だけではありません。
ノートを取るのに使うのは、鉛筆でなくて筆。
音楽の時間に鳴らすのは、リコーダーでなくて琵琶。
でもテストは、いつも100点。
ある日テストで他の子に負けたら、くやしそうで一日中不機嫌なたかこ。
その様子を見て、ある子が言いました。
「たかこちゃんて いっつも えばってる」
それを機に、たかこのまわりの空気が変わりました。
たかこの口真似をしたり、着物の裾を踏んづける遊びがはやったり。
いつも手にしていた大事な扇がなくなったり。
そんな中、学級遠足の日に、思わぬできごとが……。

「みんなと違う」ことで、からかわれたり、理解してもらえないたかこ。
それでも終始凛とした姿勢を崩さない、よい意味での気位の高さが、その高貴な出自を思わせます。
遠足の日の事件を解決したのも、「みんなと違う」、たかこだけのアイテムとその姿勢。
知らない、わからないがゆえにからかっていた「違い」も、出会って理解をすることで「発見」や「楽しさ」、「喜び」にも変わるのだと、見事に教えてくれる一冊です。
ぜひ絵本の終盤で、みんなに囲まれて楽しそうなたかこの姿を見届けてくださいね。

 

選書・文 原陽子さん
はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。

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