『ピッツァぼうや』【今日の絵本だより 第241回】
kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。
こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子で一緒にこんな絵本はいかがですか。
『ピッツァぼうや』
ウィリアム・スタイグ/作 木坂涼/訳 らんか社 1650円
9月30日は、宅配ピザの日。
1985年9月30日に宅配ピザの1号店「ドミノ・ピザ 恵比寿店」が誕生し、日本で初めて宅配ピザのサービスが始まったことから、2020年に登録された新しい記念日です。
(ちなみに11月20日は、普通の「ピザの日」なのだそうです!)
ピザと言えば、やはりこちらの絵本。
宅配ピザのデリバリーボックスのような表紙が目印の、『ピッツァぼうや』をご紹介します。
雨が降ってきて外で遊べなくなり、ごきげんななめのピート。
つまらなさそうにソファに寝そべるピートを見て、
「なにかいい手はないかな」
と、おとうさんは考えます。
「そうだ ピートでピッツァをつくったら
たのしくなるかもしれないぞ」
早速おとうさんはピートをテーブルにのせて、生地を(ピートを)こねはじめます。
ひっぱったり、のばしたり。
それからピッツァ職人のように、空中に投げて回したり。
再びテーブルにのせたら、トマトの輪切り(本当はゲームのコマ)をちりばめて、紙切れのチーズをパラパラ。
オーブン(本当はソファ)に入れて焼きあがった、できたてのピッツァを切ろうとしたら、ピッツァは笑って逃げだしました!
今回、「皆さんはどんな風にこの本を読んでいるのかな」と、いろんな読者レビューをのぞいてみたら、『ピッツァぼうや』ごっこを楽しんでいる親御さんの、なんて多いこと!
私はスタイグの作品が大好きなのですが、「なんで一度も真似してみなかったんだろう……」と悔やまれます。
今になって末っ子の小学生で試そうとしたら、こねるだけでも大変でした。
絵本はいつ読んでもいいものですが、これはぜひ、お子さんをこねたりひっぱったりのばしたり、そして空中にほうれる内に! 試すが吉ですね。
かわいい忍び笑いや、こらえきれない大笑いが聞こえてくるようです。
真面目に、でも気負いなく、息子の不機嫌に対応するおとうさんと、おとうさんの荒技をそばで見守り、ナイスな合いの手を入れるおかあさん。
とは言え決して子どもにこびているわけではない、大人たちのスタンスも素敵。
なにしろこの作品を描いたときのスタイグは、すでにおとうさんよりはるか上の年、90歳を越えていたというのも、なんともいかしていますよね!
選書・文 原陽子さん
はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。