『なすのぼうや』【今日の絵本だより 第230回】
kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。
こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子で一緒にこんな絵本はいかがですか。
『なすのぼうや』
久住卓也/作・絵 ポプラ社 1430円
8月10日は、「ハッ(8)ト(10)」でぼうしの日。
それにちなんで、かわいいぼうしがたくさん出てくる絵本、『なすのぼうや』をご紹介します。
頭にちょこんとのった紫色のぼうしが、とてもお気に入りのなすのぼうや。
今日もぼうしをかぶって、野菜畑の砂場で遊んでいます。
そこへ、いたずらな風がひゅーっと吹いてきて、大事なぼうしを舞いあげました。
「あ、ぼくの ぼうし!!」
畑の中をあちこち探してもぼうしは見つからず、なすのぼうやは半べそです。
そこへ、
「どうしたの なすのぼうや」
と声をかけてくれたのは、仲良しのとまとおねえさん。
2人で一緒に探しても、やっぱりぼうやのぼうしは見つからず、おねえさんは自分の緑のぼうしを貸してくれました。
「ほら この ぼうしも かわいいでしょ」
葉っぱのふちがくるんと上を向いている、緑のぼうしもかわいいのですが、
「やっぱり あの むらさきいろのぼうしが いいな」
と、なすのぼうやは思います。
それから、通りがかった野菜の仲間が、次々になすのぼうやにぼうしを貸してくれました。
きゅうりのおにいさんは、くるくるぼうし。
とうもろこしのもろこしきょうだいは、もしゃもしゃぼうし。
まつたけおやぶんは、三度笠のように立派な茶色のぼうし。
でもやっぱりなすのぼうやは、小さくて紫色の、あのお気に入りのぼうしがいいのです。
「ぼくの ぼうし、どこー!!」
なすのぼうやが、思わず泣きながら叫ぶと……。
なるほど、野菜ってそれぞれ、自慢のぼうしをかぶっているんですね。
しかもみんなスタイルがいろいろ、個性的。
そして、おねえさんやおにいさんに親切にしてもらっても、やっぱり自分のぼうしが恋しいなすのぼうや。
困り顔も泣き顔も、たまらなくかわいくて、いとしくなるのです。
お話は後半、みつかったぼうしをめぐる思わぬ冒険に。
大事なぼうしのために頑張るぼうやの姿も、必見です!
選書・文 原陽子さん
はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。