
『とらばあちゃんのうめしごと』【今日の絵本だより 第217回】
kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。
 こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子で一緒にこんな絵本はいかがですか。
 『とらばあちゃんのうめしごと』
『とらばあちゃんのうめしごと』
 いちかわけいこ/文 垂石眞子/絵 アリス館 1540円
関東甲信地方も梅雨入りのニュースが届きましたが、梅雨といえば、梅が熟する季節。
 ちょうどぴったりのタイミングの一冊、『とらばあちゃんのうめしごと』をご紹介します。
とらばあちゃんは、とても元気なぼくのおばあちゃん。
 今日は雨上がりの庭に、とらばあちゃんのサンダルがポツン。
 どこにいるのかと思ったら、なんと、サンダルをぬいで梅の木に登ってました!
 「雨もあがったし、そろそろ『うめしごと』を
  はじめようかとおもってね」
 するすると下りてきたとらばあちゃんは、ぼくに木に登って梅の実をもぐように言いました。
 木登りなんかしたことない、と言うぼくに
 「木のうえは、いいよー。
  こんなばあさんにもできるんだ。
  はしごをつかえば、かんたんさ」
そう、このお話は終始、とらばあちゃんの快活なキャラクターがいいんです。
 ぼくがもいだたくさんの実をきれいに洗ったら、二人でちゃぶ台に向かって、ひとつずつ竹串でへたを取っていきます。
 それをあくぬきしたら、縁側で乾かして。
 翌朝、大きなかめに塩を入れて、梅をつけていきます。
 それから出来上がりまでふた月も待つと聞いて、びっくりするぼくに、ばあちゃんは
 「まっているあいだも ごちそうのうち」
 「うめぼしひとつぶ おおごちそう!」
このお話を読むと改めて梅干しって、梅と塩だけのシンプルな材料と、待つ時間が作るものなんですね。
 巻末には、とらばあちゃんが教えるくわしい梅干しの作り方付き。
 木登りからでなくっても、とらばあちゃんの笑顔に背中を押されて、梅干しづくりに挑戦してみたくなりますよ。
選書・文 原陽子さん
 はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。









































