2021年5月2日

『あなたこそたからもの』【今日の絵本だより 第207回】

kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。
こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子で一緒にこんな絵本はいかがですか。

『あなたこそたからもの』【今日の絵本だより 第207回】の画像1『あなたこそたからもの』
いとうまこと/文 たるいしまこ/絵 大月書店 1430円

5月3日は、憲法記念日。
そして憲法記念日の前後、5月1日から7日は憲法週間とされています。
とはいえ、もしお子さんに「けんぽうってなあに?」と聞かれても、説明するのはなかなか難しいですよね。
そんなときにおすすめの1冊、『あなたこそたからもの』をご紹介します。

「けんぽうのえほん」というサブタイトルよりも愛らしい空気感の、お花の子どもの表紙。
それをめくると最初の場面も、お花でいっぱいです。
「はな、はな、たくさんのはな。
 みんなはな、おなじはな。」
でも、
「みんなおなじで、みんなちがう。」
ひとつひとつの花の色や形が違うように、人間も、年齢、性別、肌や髪の色、それぞれに違っていても、
「だれもが、ひとりのひととして、たいせつにされる。」
シンプルでいて、大切なメッセージ。
これが、日本国憲法第十三条、「すべて国民は、個人として尊重される。」の意味です。

いろんな姿のお花の子どもたちとともに、お話は進みます。
日本が世界の国々と戦争をして、その後に憲法に記した
「もうせんそうはしません。ぐんたいもいりません」
これが第九条、戦争放棄。
「だれでもみんな、おもったことをいっていい。
 へんだなとおもったら、きいていい。
 『どうしてなの?』って。」
これが第二十一条、表現の自由。
「幸福追求」「立憲主義」「疑わしきは罰せず」、習ったはずでもどこか遠かったキーワードが、ひとつひとつもやが晴れるように、よくわかる言葉になって目の前に立ち上がります。

この作品がなぜ、『あなたこそたからもの』というタイトルなのか。
「なるほど」と思う頃には、憲法がぐっと身近になっていることでしょう。
すべてひらがなでつづられていますが、お子さんによってはところどころ「?」なこともあるかもしれません。
でも、それでもいいと思います。
こんな形で初めて「けんぽう」を知った、それだけでも十分に素敵な出会いだと思うのです。

 

選書・文 原陽子さん
はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。

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