『おにはそと』【今日の絵本だより 第185回】
kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。
こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子で一緒にこんな絵本はいかがですか。
『おにはそと』
せなけいこ/作・絵 金の星社 本体1300円+税
今年も、もうすぐ節分。
一昨年の節分はこちらとこちら、昨年の節分はこちらの絵本をご紹介しました。
今回ピックアップする4冊目は、『ねないこだれだ』(福音館書店)のせなけいこさんによる節分絵本、『おにはそと』です。
節分の夜。
「おにはそと! ふくはうち!」
と、子どもたちが勇ましく、やってきたおにたちに豆を投げています。
「いたい! やられた!」
と逃げていく、赤おにや緑おに。
ですがそこにひとりだけ、
「おいちいな」
と豆を食べながら、ちびおにが残っていました。
それに気づいた子どもたちが、
「かわいい こだなあ。
ぼくらと あそぼうよ。」
と言うと、ちびおにも
「うん。」
と意気投合、みんなでおにごっこをして遊びます。
その頃、逃げて帰ったおにたちは、おにの親分に事態を報告。
「まめで やられました。」
「ひどいめに あいました。」
「ちびちゃんだけ にげられなくて……」
それを聞いた親分は、豆に負けない銀のよろいを作って着込んで、ちびおにを取り戻しに出発します。
「やい、にんげんども!」
と意気込む親分を待ち受けていたのは……。
せなけいこさんの絵本の、ちょいととぼけたお話運びが私は大好きなのですが、これもまたしかり。
あちこちにちりばめられたユーモアは、「節分」と聞くと恐怖で固まってしまうお子さんの心をほぐすのにも、ほどよい具合ではないでしょうか。
せなさんといえばその貼り絵もいつも見事ですが、本作では銀のよろいの存在感がすごいんです。
おにのパンツのさりげないふわふわ感にも、注目。
そしてラストと裏表紙、終始マイペースなちびおにちゃんにも、ふふふ、なのです。
選書・文 原陽子さん
はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。