『たこあげ』【今日の絵本だより 第183回】
kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。
こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子で一緒にこんな絵本はいかがですか。
『たこあげ』
青山友美/作 講談社 本体1400円+税
寒風の吹くこの時期ならではの遊びといえば、たこあげ。
このお正月にたこあげを楽しんだ方は、いらっしゃるでしょうか。
「立春の季に空に向くは、養生のひとつ」という言い伝えから、旧暦では立春から始まった新年にあわせて、現在の新年の始まり、お正月にたこあげを楽しむようになったとも言われています。
今回ご紹介する絵本は、『たこあげ』です。
商店街の魚屋の男の子、てっちゃんが、
「とーちゃん、たこあげ しに いってくるー」
と、たこを手に元気に飛び出しました。
駆けていくてっちゃんを見て、同じ商店街の八百屋のれんくん、お茶屋のゆきちゃん、味噌屋のたいちゃんも、
「どこ いくのー?」
「ぼくも いれてー」
と、自分のたこを持って走り出しました。
商店街を抜ければ、そこはもう海。
さあ、みんな糸を繰り出して、力いっぱい走ります。
みんなのたこは海風を受けて、青い空の中、どんどん高く、ぐんぐんあがっていきます。
でもてっちゃんのたこには、実はてっちゃんも知らない秘密が……。
てっちゃんの握った糸の先、空のはるか彼方で、こんなことが起きているとは。
驚きのできごとは、ぜひ絵本を開いてお確かめください。
この連載ではよく「裏表紙まで見るのをお忘れなく」と言っていますが、『たこあげ』では裏表紙はもちろん、表紙をあけてすぐの前見返し、裏表紙のひとつ手前の後ろ見返しも、見比べてみてくださいね。
「なーるほど!」と、ニヤニヤしちゃいますよ。
そして商店街のあちこちにも、いろんな発見があって繰り返し楽しめるのです。
たこあげは未体験の方も多い遊びかもしれませんが、体力や技がなくても、よい風に乗れば楽しめるのがいいところ。
空を飛ぶものと自分の手がつながっているあの不思議な、でも確かな感覚、てっちゃんたちが夢中になるのもうなずけます。
親子で一緒に遊べる内に、ぜひ一度たこあげ体験、おすすめです。
選書・文 原陽子さん
はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母