『いもうとガイドブック』【今日の絵本だより 第154回】
kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。
こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子で一緒にこんな絵本はいかがですか。
『いもうとガイドブック』
ポーラ・メトカーフ/文 スザンヌ・バートン/絵 福本友美子/訳
少年写真新聞社 本体1500円+税
前回に続けて、今回も妹の絵本をご紹介。
『いもうとガイドブック』はその名の通り、妹についての取扱説明書です。
本の扉をめくれば、「はじめに」にはこんな言葉。
「これは いもうとのことが よくわかる ガイドブックです。
いもうとが いるひとや、
これから いもうとが ほしいひとは
ぜひ よんでください。」
いもうとが最初にやってくるときは、たいてい赤ちゃんです。
「あかちゃんは、あったかくて しっとりしています。
まるで できたての しょくパンみたい。
でも、バターをぬっては いけません。
それに、しょくパンより ずっとうるさいです。」
それから、
「しばらくすると、はが はえてきます。
ちっちゃくて、かわいい は。
でも、すごく いたいです。」
こんな調子で「あかちゃん」「あるきはじめ」「すきなこと」「おかたづけ」など、おねえちゃんによる解説は全部で13章仕立て。
大きくなっていくいもうとが、かわいいような、憎たらしいような、を行ったり来たりのおねえちゃん。
おねえちゃんもいもうとも、それぞれにどこかちゃっかりしているのが、姉妹らしくて微笑ましい。
ママのお化粧道具を試すおねえちゃんのそばで、いもうとがクレヨンでお化粧していたり、おねえちゃんがわけるお菓子は「あなたには ひとつ、わたしには ふたつ……」だったり。
現実ではもめごとになりそうな、いろんな姉妹あるあるが、サラッと描かれているのもいいんですよね。
カラッとしたユーモアと、シンプルだけどおしゃれなイラストで、ふふっと軽やかな読後感。
最後の章は「おやすみなさい」。
「ひるま どんなに けんかをしても、
よるになったら なかよくしましょう。」
ラストシーンには思わずほっとして、ふたりとも一層愛しくなって。
ちなみに作者のポーラ・メトカーフさんは、姉と妹がいるので、姉妹の気持ちはどちらもわかるのだそう。
冒頭の写真つきの献辞を見ると、画家のスザンヌ・バートンさんも姉妹のようですよ。
なるほど、納得の空気感です。
選書・文 原陽子さん
はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。