2020年7月15日

『青いヌプキナの沼』【今日の絵本だより 第142回】

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kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。
こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子で一緒にこんな絵本はいかがですか

『青いヌプキナの沼』【今日の絵本だより 第142回】の画像1『青いヌプキナの沼』
かこさとし/作 復刊ドットコム 本体2300円+税

今回も前回に引き続き、民族共生象徴空間「ウポポイ」オープンにちなんで、アイヌのお話をご紹介します。

北海道がまだ、エゾ(蝦夷)と呼ばれていた頃のこと。
アイヌの人々がヌプキナと呼ぶ花、すずらんのたくさん茂る湖のほとりに、タキシとチリの兄妹が住んでいました。
寒い小さな小屋の中で病に伏せるチリのため、タキシは雪の中を猟にでかけます。
チリに栄養のあるものをと、タキシが足を踏み入れたのは、御領地の山。
内地からやってきた侍たちにアイヌの人々が追い払われ、内地の殿様のものとされてしまった山です。
雪山を回り、弓矢でしとめた大きなオジカを肩にかついだタキシが、チリの待つ小屋にもうすぐ帰れるというそのとき、突然、「ターン」という銃声が。
オジカをねらった殿様の銃弾が、タキシの頭を貫いたのです。
「御領地で猟などするからだ」と、血に染まる雪の中に、そのまま捨て置かれたタキシ。
長い冬が過ぎて春になり、兄の帰りを待ちわびたチリがようやく外に出て見つけたのは、峠の雪の中に眠る、変わり果てた兄の姿でした。
涙をたたえた目でヌプキナの湖を見据えながら、チリはある決意を固めます。

かこさとしさんはあとがきで、略奪され土地を追われた先住民にはわずかな口伝えしか残らないことに心を寄せ、こう述べています。
「そうした小さな伝説や名残の中から、ふと耳にした白いヌプキナ(すずらん)の花の物語は、涙のつらなりのように私には思えました。汚れた栄光で見失ってはならないものを、埋もれてはならないものを、この国の中で、この国の子どもたちに知ってほしいと思ってまとめたのが、このお話です。」
国連総会で「先住民族の権利に関する国連宣言」が採択されてから、早13年。
アイヌの人々を描いた絵本が、子どもにとっても大人にとっても、アイヌの歴史にふれるひとつのきっかけになりますように。

 

選書・文 原陽子さん
はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。

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