2020年7月11日

『ひまなこなべ』【今日の絵本だより 第141回】

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kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。
こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子で一緒にこんな絵本はいかがですか

『ひまなこなべ』【今日の絵本だより 第141回】の画像1『ひまなこなべ』
萱野茂/文 どいかや/絵 あすなろ書房 本体1400円+税

 札幌から車や電車で約1時間、緑深い白老町ポロト湖のほとりに、アイヌの歴史と文化を伝える民族共生象徴空間「ウポポイ」が、明日7月12日にオープンします。
それにちなんで今回は、アイヌにまつわる絵本、『ひまなこなべ』をご紹介します。

北の大地にはるか昔から暮らしてきた、アイヌの人々。
彼らは自然や生きもの、それから生活道具にも、すべてのものに魂は宿っていて、それらはみんな神(カムイ)であると考えていました。
その数々の神の中でも、くまは一段と特別な神。
肉や毛皮、薬を与えてくれるくまの神の命を頂くときは、アイヌたちは最高の敬意をもってごちそうや歌や踊りを捧げ、丁寧に神の国へと送り返します。
この儀式がイオマンテ(くまおくり)です。

あるとき、地上に降りたくまの神が、心のいいアイヌの矢によって命を迎えられました。
くまの神は魂だけの姿となって、今は目を閉じたくまの頭の上にちょこんと座っています。
(この愛らしい姿……、ぜひ絵本で見てください!)
村人が次々に集まり、くまの神に歓迎の言葉をのべ、夜の宴が始まります。
ごちそうが並び、みんながにぎやかに歌い踊る中に、特別に踊りが上手な若者の姿がありました。
飛ぶように軽い身のこなし、目にもとまらぬとんぼ返り、あまりに見事でいつまでも見あきることがありません。
イオマンテが終わり、神の国へ戻ってからも、その若者の踊りが忘れられないくまの神。
再び地上へ降りて同じアイヌの矢に打たれ、家に迎えられてまたあの踊りを楽しみますが、若者の正体は謎のまま。
踊りを見たさに再訪を繰り返すくまの神は、あるときついに……。

命を頂くこと、心から感謝を捧げること、そして繰り返しもたらされる神からの恵み。
お話の向こう側に、人間や動物だけではない、すべての命の大きな輪廻を感じるのではないでしょうか。
彼の地の自然、親しみやすいくまの神、アイヌ刺繍や暮らしの道具。
温かみあふれるどいかやさんの絵で、長く語り継がれてきたアイヌの民話が、とても近しい物語に思えます。
『ひまなこなべ』というちょっと不思議な題名も、ぜひ中を読んでそのわけに納得してくださいね。

 

選書・文 原陽子さん
はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。

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