『とらのこさんきょうだい かえうた かえうた こいのぼり』【今日の絵本だより 第125回】
kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。
こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子で一緒にこんな絵本はいかがですか。
『とらのこさんきょうだい かえうた かえうた こいのぼり』
石井聖岳/作 講談社 1650円
今年ももうすぐ、こどもの日。
昨年はかっぱの家族のお話をご紹介しましたが、今回は元気なとらの家族のお話、『とらのこさんきょうだい かえうた かえうた こいのぼり』をご紹介します。
「やねよ〜り〜 た〜か〜い こいの〜ぼ〜り〜♪」
とらのお父さんが歌いながら、家の前にこいのぼりを出しています。
すると3兄弟のこどもたちが、家から出てきて大はしゃぎ。
「こいのぼりったら、こいのぼり!!」
こいのぼりったら、こいのぼり!!」
そして、替え歌を歌います。
「くもよ〜り〜 た〜か〜い こいの〜ぼ〜り〜♪」
屋根でなくて雲、すごい!
表紙の絵のようにみんなでこいのぼりに乗って、ゆうゆうと大空散歩、気持ちよさそうです。
「かっこいい うた、かんがえるねえ。」
とお父さんに言われて、
「じゃあ、つぎは 2ばん!」
「いえよ〜り〜 で〜か〜い こいの〜ぼ〜り〜♪
おおき〜な〜 からだ〜が〜 おもたそう〜」
あらあら、大きすぎるこいのぼりの下で、みんなのおうちがつぶれそうですよ。
お父さんがほめ上手なものだから、こどもたちの替え歌はどんどん続きます。
へびより長いこいのぼり、何でも食べるこいのぼり、それからそれから……。
次々できる愉快な替え歌を一緒に歌うのも楽しいですし、オリジナルの替え歌を作ってみても!
ふだんは絵本をあまりじっと聞かないような、おふざけ大好きなお子さんこそ、盛り上がるかもしれませんよ。
こいのぼりや鎧兜を出して飾って、柏もちやちまきを用意して、菖蒲湯はどうする……と、お節句には準備のあれこれに追われがちなのが大人ですが。
本当はラストのお父さんのように、こどもたちの成長を肌で感じられたら、それが一番なんですよね。
こいのぼりのイベントも、全国的に中止が相継いでいる今年ですが、来年はきっとまた、今年とは違うこどもの日。
一回り大きくなった子どもたちと、大空を泳ぐこいのぼりを、お外でのびのびと見上げられますように。
選書・文 原陽子さん
はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。