2020年3月21日

『いちご』【今日の絵本だより 第115回】

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kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。
こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子で一緒にこんな絵本はいかがですか。

『いちご』【今日の絵本だより 第115回】の画像1『いちご』
荒井真紀/作 小学館 本体1500円+税

春は、いちごの季節。
ころんとした赤い三角にちょこんと緑の帽子、あの愛らしさは果物の中でも、なんだか特別な感じがします。
今回はそのいちごが主役の新刊絵本、『いちご』をご紹介します。

ページを開けばお皿の上に、みずみずしいいちごがたくさん。
手に取って食べたら、
「ぷちぷちぷち……。
 いちごを たべると おとが します。
 いったい なんの おとでしょう?」
何の音か、わかりますか?
「いちごを そだてて しらべてみましょう。」

はじまりは、いちごの苗から。
その根元から新しい芽が伸び、花が咲きます。
花が散ったら少しずつ、実がふくらんでいきます。
少しずつ成長していくその様子に、ワクワク。
葉も花も実も、細部までリアルな、そして実物よりも大きな絵。
ぐーっと近寄ると、見慣れたはずのいちごも、まるで新鮮に見えてくるものですね。

驚くほど細密な描写で植物を描く、作者の荒井真紀さん。
既刊『たんぽぽ』(金の星社)では、世界最大規模の絵本原画コンクール、ブラティスラバ世界絵本原画展の2017年度金のりんご賞を受賞しています。
緑のヘタの産毛まで見える、1ページ大いっぱいに描かれたいちご、それをめくるとまた1ページ大いっぱいのいちごの断面図。
そうして、
「いちごは おおきな みだと、
 ひとつの みから 300こも たねが とれます。」
と、300個の種がすべて並んだ見開きは、まさに圧巻!
なるほど、食べるときに聞こえた、「ぷちぶちぶち」という音の正体は……。

読み終えると、なんだか自分が小さい生きものになっていちごの宇宙をのぞいてきたようで、少し呆然。
しばらくしてからも、いちごの世界に魅せられてしまった証拠か、「いちごを そだてて しらべてみましょう。」という言葉が、折々にふっと頭に浮かんできます。
(苗は秋に植えるそうですよ。)

 

選書・文 原陽子さん
はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。

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