『チョコレートがおいしいわけ』【今日の絵本だより 第107回】
kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。
こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子で一緒にこんな絵本はいかがですか。
『チョコレートがおいしいわけ』
はんだのどか/作 アリス館 本体1500円+税
今日はバレンタイン。
kodomoe世代の皆さんは、家族チョコや友チョコでわいわいにぎやかな一日でしょうか。
毎日とても身近なスイーツ、チョコレート。
でも、チョコレートがどうやってできるのか、ご存知ですか?
それをゼロからわかりやすく教えてくれるのが、『チョコレートがおいしいわけ』です。
ここは、南の国のカカオ農園。
オレンジ色のカカオの実の男の子・カカと、黄色の女の子・ポドが、皆さんをご案内します。
一番始めのチョコレートのもとは、カカオの実の中の、カカオ豆。
バナナの葉っぱの布団に包まれ、ぽかぽかしながら一週間。
今度は広いベッドに広がって、暑い空気をたっぷり吸って、5日間眠ります。
「発酵」や「乾燥」といった言葉はなしでも、子どもたちに伝わるように書かれているのが、さらっとみごとです。
さあ、からからに乾いた豆たちは、袋にぎっしり詰められて、船に乗って日本へ旅立ちます。
カチンコチンで苦ーい豆が、チョコレート工場でとろーり、甘ーいチョコレートに大変身。
型に流して冷やしたら、デコレーションをしてできあがり!
ところでふたりの名前、「カカ」はわかるけど、「ポド」って何かしら?
……と思ったら、カカオの実を「カカオポッド」と言うんですね。
あとがきにありました。なるほど!
暑い南の国から日本の工場までずっと案内してくれる、かわいいカカとポドにニコニコしながら読んでいたら、いつのまにかチョコレートの成り立ちがすとんと頭に入ってしまう。
「あれ、もしかしたら科学絵本だった?」というお得な読後感。
そしていろんなチョコレートができあがった後に、
「もうひとつ いきたい ところが あるんだ」
と言うカカとポド。
一体、どこへ旅立つと思いますか?
……このラストに、なるほど!(2回目。)
『チョコレートができるまで』ではなく『おいしいわけ』というタイトルなのが、腑に落ちました。
これから出会うチョコレートが、今までよりもぐんと味わい深くなりそうです。
選書・文 原陽子さん
はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。