
『おせんべ やけたかな』【今日の絵本だより 第92回】
kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。
 こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子で一緒にこんな絵本はいかがですか。
『おせんべ やけたかな』
 こがようこ/構成・文 降矢なな/絵 童心社 本体950円+税
前回に引き続き、発売中のkodomoe12月号巻頭特集「絵本とおやつ」でご紹介した絵本をピックアップ。
 和菓子の絵本9冊の中からこの1冊、『おせんべ やけたかな』のご紹介です。
「♪おせんべ やけたかな」と、開いた手をおせんべに見立てて、指でつついてひっくり返すわらべうた。
 子どもの頃にやってみたこと、ありますか?
 絵本を開くと、焼き網の上に並んだ、まだ白いおせんべ7枚。
 「♪おせんべ やけたかな」とページをめくると……、
 「やけた!」
 と、1枚ひっくり返って、お顔のついたおせんべが登場。
 ほどよく焼けて、驚き顔。
 さあもう一度、「♪おせんべ やけたかな」で……、
 「やけた!」
 今度は前髪つきの、さらに香ばしそうなおせんべが現れました。
 さあ、次はどれが焼けるかな?
 どれかなどれかな、というワクワクはもちろん、ページをめくるたびにくるくる変わるみんなの表情もご愛敬。
 赤ちゃんはまあるいお顔が大好き、7枚の元気なおせんべたちに、きっと心をひかれることでしょう。
わらべうたと言っても、「歌は苦手で……」と身構えなくても大丈夫。
 言葉を読むと、自然とリズムが生まれます。
 とはいえ気になってしまう方もご心配なく、巻末には楽譜と遊び方も載っています。
 私自身、「わらべうた、もっと試してみなくては……」と思いつつ、赤ちゃん時代を過ぎてしまった保護者ですが、「どう歌うか」「どう遊ぶか」なんて正解にとらわれず、とにかくやってみればよかったなあと、今になってみれば思います。
 小さくて柔らかくてぷくぷくの手を取って、親と子だけで向かい合う時間。
 すっかり子どもと手をつながなくなった今の自分からは、それがとても贅沢に、輝いてみえるのですよ。
『おせんべ やけたかな』は、3冊組の「わらべうたでひろがるあかちゃん絵本」シリーズの中の1冊。
 昨年発売ですが、昔からあったかのような安心感があるこのシリーズ。
 文は、長年子どもとおはなしをつなぐ活動を続けてきた、こがようこさん。
 絵は、『ともだちや』『めっきらもっきら どおんどん』などでおなじみの降矢ななさん。
 たくさんのお母さんが子どもに歌ってきた、昔からつながる思いを感じて、赤ちゃんとのふれあいを楽しんでみてください。
 赤ちゃんお誕生のお祝いにもおすすめです。
選書・文 原陽子さん
 はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。


































