『よるのわがしやさん』【今日の絵本だより 第57回】
kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。
こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子で一緒にこんな絵本はいかがですか。
『よるのわがしやさん』
穂高順也/文 青山友美/絵 文溪堂 本体1500円+税
6月16日は、今年の父の日、そして和菓子の日。
今から1171年前の西暦848年、仁明天皇が6月16日に16の数にちなんだお菓子などを神前に供え、招福と厄除けを祈って、「嘉祥」と改元しました。
この「嘉祥の日」に和菓子を食べる習わしは明治時代まで続いていましたが、その後下火となり、その復活を願って1979年に全国和菓子協会が「和菓子の日」と制定したのだそうです。
そんな歴史のある和菓子の日にちなんで、こちらの絵本はいかがでしょうか。
『よるのわがしやさん』。
ここは、昔ながらの和菓子の並ぶ和菓子屋さん。
なんでも最近、ご近所に洋菓子屋さんができたのだそう。
どんな様子のお店なのか偵察するべく、和菓子屋さんの5人の仲間が集まりました。
白いおもちにしっとりあんこの、だいふくもち ふくのすけ。
おいしいあんこに身を包んだ物知り博士、ぼたもち ぼたまる。
柏の葉っぱで空を飛ぶ、かしわもち かしえもん。
桜の香りを漂わせる、さくらもち さくりん。
よもぎの緑でもっちりもちもち、くさもち くさたろう。
夜になったら、さあ出発!
2頭身の小さなヒーローが、5人で夜の街を行く姿がなんともかわいい。
冒険、変身のわくわく感と、とはいえマイペースなほのぼのムードがあいまって、いい味わいなのです。
洋菓子屋さんに着いたみんなは、初めて見るプリンやシュークリームに大はしゃぎ。
大きないちごのケーキのお城を見つけると、そこではいちごの王さまとお姫さまが何やら相談中で……。
そこから先は、驚きの急展開。
和菓子と洋菓子の偶然の出会いが生んだ、「なるほど!」のハッピーエンド。
読んだ後は必ず、幸せな気持ちで、あの和菓子が食べたくなりますよ。
選書・文 原陽子さん
はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。