2019年2月14日

『チョコレートパン』【今日の絵本だより 第32回】

kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。
こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子で一緒にこんな絵本はいかがですか。

『チョコレートパン』
長新太/作 福音館書店 本体900円+税

今年もバレンタインがやってきましたね。
義理チョコ、友チョコ、家族チョコ、近年ではすっかりいろんな形に進化(?)した、日本の
バレンタイン。
チョコレートが出てくる絵本もいろいろありますが、kodomoe読者の皆さんなら、小さい
お子さんと一緒に読めるこんな1冊はいかがでしょう。
『チョコレートパン』。

表紙に見える風景は、何でしょう。
「これは チョコレートの いけ。」
そこへ、
「パンが トコトコ あるいてきて……」
たくさんのかわいいパンが、チョコレートの池に、温泉みたいに入ってしまいました。
そしてページをめくると、パンが池からあがって歩いていきます。
「チョコレートパンの できあがり。」

もう、これだけでも、固い頭がふにゃ〜っととろけてしまうのですが。
またむこうから何かやってきて、チョコレートの池に入りましたよ。
「ビュー ビュー」
と空中にチョコレートを噴き上げるのは……
「ゾウです。」
それから、リス、ウサギ、ネズミ……、いろんな動物がどんどんやってきて、次々入って
きます。
そこでついに池が(!)、一言。
みんなに何と言ったかは、ぜひ読んで確かめてみてくださいね。

作者は、ナンセンスの神様と言われる長新太さん。
『キャベツくん』(文研出版)や「へんてこライオン」シリーズ(小学館)など、子どもは大ウ
ケでも、大人は「……?」となってしまう絵本を、たくさん描かれています。
絵本に正解や教訓を求める人だと、あまりにとらえどころがなくて「ええっ?」と思うかも
しれませんが、それがツボ。
絵本の懐の広さ、深い可能性を感じさせてくれるのが、長さんワールドのありがたさ。
私は子どもの頃から生真面目な方なので、長さんの世界に飛び込み、自由に泳げる人(子)
がうらやましいのですが、そんな自分にも『チョコレートパン』は親しみやすい物語。
裏表紙に並んだパンたちが、なんともかわいいんですよ。

『チョコレートパン』の対象年齢は、2歳から。
チョコレートの池に身も心もひたりながら、親子で頭をゆるめてみてください。
ちなみに私はチョコフォンデュを見ると、『チョコレートパン』を思いだし、池のセリフがリフレインします。

 

選書・文 原陽子さん
はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。

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