『でんしゃにのるよ ひとりでのるよ』【今日の絵本だより 第9回】
こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子で一緒にこんな絵本はいかがですか。
『でんしゃにのるよ ひとりでのるよ』
村せひでのぶ/作 宮澤ナツ/絵 交通新聞社 本体1300円+税
10月14日は、鉄道の日。
『でんしゃにのるよ ひとりでのるよ』は、主人公の男の子・はるとがはじめてひとりで電車に乗って、おじいちゃんの家まで行くお話です。
何度も電車で行ってるんだから、ひとりだって大丈夫だよ、と、元気よく家を出たはると。
でも、いざ駅に着くと、
「あれ? えきって こんなに ひろかったっけ?」
……このつぶやきに、読んでいる方も胸がキューッとなります。
ひとりだと、見慣れた景色も違って見える。
まるでうちの子の旅立ちを見るように、心配になってきます。
改札を抜けて、まずは赤い電車に乗ります。
次は黄色い電車へ、無事に乗り換えたと思ったら、ホームから謎のおじさんが呼んでいる?
あ、行き先が反対の電車に乗っちゃったんだ!
大丈夫? どうなるの!?
子どもがはじめてひとりで電車に乗るって、大冒険ですよね。
見送る側の、親にとっても。
思えば、はじめて赤ちゃんと一緒に電車に乗る日の、緊張感。
ベビーカーでの乗り降り、電車内での位置取り。
起きないか、泣かないかとドキドキして。
ベビーカーを卒業しても、隣の席にじっと座っていられるか、間を持たせるのは、おやつかおもちゃか……。
うーん、電車に乗ることひとつとっても、育児に大きな歴史あり。
子どもがひとりで電車に乗る日は、親にとっても、大きな記念日なのかもしれません。
駅員さんに教えてもらって、正しい電車に乗り直し、なんとか無事におじいちゃんの家まで着いたはると。
ですがそこに、「ピンポーン」とさっきの謎のおじさんが現れて……。
その正体に、大笑い。
親としては、大いに共感。
「ひとり電車デビューも、そろそろかな?」と思ったら、ぜひ親子で読んでみてください。
親子ともども、心構えの予習になること間違いなしの絵本です。
選書・文 原陽子さん
はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。