真夜中のカブトムシに手伝ってほしいこと【ぼくとフジオ・5】
『ねたあとゆうえんち』や『よなかかいじゅうイビキラス』(ともに白泉社)などでおなじみの絵本作家でイラストレーターの大串ゆうじさんが、子育ての中で日々湧いてくる「妄想」を描きます!
こんにちは。今回は「カブトムシ」の妄想です。虫のネタが続いているので、ほかも考えたのですが、「カブトムシ」に関しては季節的にもギリギリの今発表しておきたいと思いました。
7月の終わりごろ、息子・フジオのバッタブームが終わりそうな時期に「よ~し! 次はカブトムシとクワガタだ!」と思い立ち、「東京 昆虫採集 カブトムシ」と検索したところ、我が家の周辺にも何箇所か自転車で頑張れば行ける距離に「カブトムシスポット」がありました。
「東京でもカブトムシ捕まえられるのか~!」と興奮して、家族みんなで行くことに。2つの大きな公園に行ったのですが、公園で出会った親子にカブトムシを譲ってもらったり、土の中で見つけたりして、フジオも大興奮。そして5匹のカブトムシと3匹のクワガタを飼うことになりました。
調べてみると、カブトムシはけっこう卵を産み、比較的育てやすということなので、面白そうだし、フジオの経験的にもいいかな~と思い卵からも育ててみることにしました。オス同士は同じ虫かごに入れない方がいい、湿気はある程度あった方がいい、などなど注意点もいろいろありますが、生き物が好きなフジオも嬉しそうに手伝ってくれています。僕もどんどんカブトムシにはまってしまい、いい土を買ったり、YouTubeで飼育方法の動画をついつい見てしまったり、いつの間にか頭の中はカブトムシのことでいっぱいになっていました。
第5回 こんなことしてくれたらいいな 真夜中のカブトムシ
カブトムシを飼ってみて、驚いたことがありました。彼らは夜行性なので昼間はおとなしく(だいたい土の中にもぐっています)夕方頃からムクムクと活動をはじめます。僕もどちらかというと夜型タイプで、家族が寝静まりシーンとした夜中に、頭の中の創作スイッチが入り、テンション高く絵を描いていることがよくあります。
そんな時、玄関の方で「ガサ! ゴソ! ガサゴソ!」と動き回る音や、「ヴゥゥゥーーン!! ガサ!」と急にハネを動かす音が思った以上に大きく、最初は「え!?」「だれ!?」という感じでビックリしました。子どもの頃もカブトムシを飼っていましたが、彼らが夜中にこんなに元気になることを初めて知りました。
最初はその大きな音が気になりましたが、だんだんと「一緒に活動してる夜の仲間」みたいな感覚になり、トイレに行く時ちょっと覗いたりして、愛着も増していきました。そして「夜中にこんなに元気でパワーがあるなら、いろいろ手伝ってくれないかな~」と妄想するようになりました。
その1 夜中に郵便ポストに行ってくれるカブトムシ
書類などの郵便物を「もう夜だし、明日起きたら出せばいいかな~」と思って放置しておいたら、次の日の夕方になっていた!ということがズボラな僕には時々あります。
そんな時、夜中に元気なカブトムシが「いいよ。出してくるよ。ついでに帰りに蜜吸って帰ってくるっす!」と軽いノリでスイ~っとポストに出しに行ってくれたらいいな~という妄想です。そのままどっか行っちゃうかな……(笑)
その2 夜中にパソコンを再起動してくれるカブトムシ
最近パソコンの調子が悪く、夜に一回再起動をするようにしているのですが、それを僕が忘れてしまったり、家族で旅行に行ってるときなどにやってくれたら嬉しいな~という妄想です。
その3 絵を描くのを手伝ってくれるカブトムシ
締め切りギリギリで睡眠時間を削って絵を描いていると、ついウトウトしてしまうことがあります。そんなときに絵を描くのを手伝ってくれたら助かるな~という妄想です。お礼は高級ゼリーに高級バナナを付けてあげたいと思います。
残念ながらカブトムシは冬を越せないのですが、たくさんの幼虫が来年の夏に向けてムクムクと土の中で育っていくので、その様子をフジオと一緒に観察していきたいと思っています。
今回は真夜中にひとりで絵を描いているときに考えたカブトムシの妄想でした。ありがとうございました。
大串ゆうじ
おおくしゆうじ/1976年茨城県出身。多摩美術大学絵画科油画専攻卒業。個展などで作品を発表しながら、雑誌、テレビ、広告などのイラストレーションで活躍。著作絵本に『よなかかいじゅうイビキラス』、『ねたあとゆうえんち』(白泉社)『しょうてんがいくん』(偕成社)がある。
www.senggeng.com/kushi/