『ひこうきがとぶまえに』作者キッチンミノルさんにインタビュー【コドモエ絵本作家インタビュー】
カメラマンであり、しゃしん絵本作家でもあるキッチンミノルさんに、単行本化した『ひこうきがとぶまえに』や、『たいせつなぎゅうにゅう』の制作秘話をうかがいました。後半では、出版記念展の情報も!
キッチンミノルさんに
インタビュー
――今回の絵本(「ひこうきがとぶまえに」)で、航空整備士をテーマにしたきっかけは?
たまたまテレビで観た整備士さんの特集が面白かったので調べてみたら、飛行機は地上にいるとき、整備士さんがOKしないと絶対に動かないと知って。安全運行のための凄まじい努力の数々にも驚いて、まさに「命を預かる」仕事を紹介したいと思いました。
――今作おすすめのシーンは?
エンジン整備のシーンです。ものすごく巨大で、管や配線がぎゅうぎゅうに詰まっているのですが、整備士さんはそのすべてを理解した上でバラバラに分解していく。とても迫力のある写真が撮れたと思います。
――JAL(日本航空)の取材で印象に残ったエピソードは?
飛行機が格納庫に帰ってくるとき、地面の線にまっすぐ止まれるように誘導するのですが、1センチのずれでも、巨大な機体の後部は何十センチもずれてしまう。正確に止まれるまで、何度も入れ直すそうです。それと、飛行機って、ペン1本でも予定外のものを載せていると判明したら、飛んでいても引き返さないといけないらしくて。だから機内の撮影を終えて降りるとき、とにかく忘れ物をしないでと念を押されて、必死に確認しました(笑)。
――前作『たいせつなぎゅうにゅう』では、牛乳ができるまでを追いました。
人間と同じで、牛も仔牛を産まないとお乳が出ないと初めて知り、絵本にしたいと思いました。牛の大切なお乳をいただいて、それがいろいろな人の協力で牛乳になり、私たちに届く。それを臨場感をもって伝えるために、この本に出産シーンは必須でした。
――出産の撮影は、やっぱり大変でしたか?
そうですね。釧路空港に着いた夜、産気づいている牛がいると連絡があって、慌てて牧場に向かいました。すると、「今晩には産まれるから、撮ったらいいよ」って言って、「じゃあ!」って僕一人残して帰っちゃったんですよ(笑)。破水したらすぐに産まれると言われていたので、僕は立ったり座ったり苦しそうにしている牛をずっと見ていることにしました。でも、その日は結局、産まなかったんです。僕が見ていたせいで牛が緊張しちゃったみたいで……。そこから二晩徹夜でした。無事産まれたときは、本当に感動しました。僕が緊張させちゃったこともあって、ホッとしましたね。出産後、仔牛がいる牛舎の横を通る牛たちがみんな、入口の柵から頭を入れて中の様子を覗きにくるんですよ。仔牛が産まれる前はそんなことなかったので、不思議で微笑ましい光景でした。
ひこうきがとぶまえに
『ひこうきがとぶまえに』
キッチンミノル/作
テキサスブックセラーズ 1914円
飛行機が格納庫に帰り再び空に飛びたつまでの、航空整備士の物語。kodomoe2022年8月号付録に大幅加筆、さらに迫力満点の一冊に。巻末には詳しい解説も。
たいせつなぎゅうにゅう
『たいせつなぎゅうにゅう』
キッチンミノル/作 白泉社 1320円
牛からいただいた「大切な牛乳」が幼稚園に届けられるまでを、ダイナミックな写真とあたたかなまなざしで伝えます。「子どもが牛乳を飲むようになった」という反響も。
キッチンミノルさん
きっちんみのる/写真家。アメリカ・テキサス州生まれ。しゃしん絵本に「マグロリレー」(かがくのとも2019年12月号 福音館書店)など。
EVENT情報
キッチンミノル『たいせつなたまご』出版記念展
誠光社(京都)9月1日(日)~15日(日)
キッチンミノル『ひこうきがとぶまえに』出版記念展
本の轍(愛媛)8月15日(木)~9月2日(月)/Readin’ Writin’ BOOK STORE(東京)10月9日(水)~20日(日)
(kodomoe2024年8月号掲載)