2021年7月9日

本物よりも、おいしそう!『おかしのずかん』ができるまで。大森裕子さんオンライントークを特別公開

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――書店員さんからの質問をいくつか。「どのお菓子を描くのが一番難しかったですか?」

クロカンブッシュ。フランスのウエディングケーキとも言われています。単体をばしっと描くのはわりと得意なのですが、複数のものが集合していると、どの程度まで抜け感を出すかが難しかったりして。

――「描くケーキは、全部買ったんですか?」

買えるものは買っていますが、全部は購入していません。シリーズ第1作の『おすしのずかん』のときは、全部見て食べて描くことにこだわらなくちゃ、と思っていたのですが、やっていくうちに美容にもよろしくないと(笑)。あとは、だんだん想像して描けるようにもなってきたので。

――「大森さんご自身お気に入りのお菓子は?」

絵だったら、フレジエが気に入っています。食べるならモンブランかな。

――ずかんシリーズの特徴として、魅力的な動物たちが案内してくれる、というのがありますよね。写実的な絵とはひと味違う、コミカルでかわいらしいキャラクターは、どうやって生まれているのですか?


『おかしのずかん』の「うさぎスイーツ」の店員のうさぎは、「いわゆるうさぎ」にはしたくないなと思って、まず『うさぎの品種大図鑑』(誠文堂新光社)を見て、どんな品種がいるのかなーと。すると、かなり多種多様で……面白い形だな、とか思ったりしながらスケッチしました。

うさぎって目が横に付いているので、正面顔がかわいくならず、なかなかうまく描けなくて。「ピーターラビット」はどんな感じだったっけ、と模写をしました。模写しながら、自分の絵にしたらどうかなと描いてみたりして、リアルなうさぎから、だんだんデフォルメしていく。うさぎは手が前についていて目が離れているけれど、キャラクターにするときにはこのぐらいが落とし所かな、っていうのを探りながら作っていきます。

↑『ピーターラビット』の模写。

↑リアルなうさぎから、親しみやすいキャラクターへと落とし込んでいく。

――「なんとなく」描いていないから、たくさんうさぎが出てきても、すべてその品種ならではの造形になっている。『おすしのずかん』も、じっくり見るといろんな種類のペンギンを知ることができて、楽しいですよね。

ペンギンも犬も、同じようにスケッチをして、キャラにするときの着地点を見つけていますね。

――次は文章についてですが、大森さんならではの文体で、少し「くすり」として、大人も「ほー」となるような豆知識が凝縮されています。文は、どうやって考えていらっしゃいますか?


私はずかんを、詳しいから描いているのではなく、本当にまったくの素人で知識が何もないから描いているというか、自分が知りたいなと思うことをモチーフにしているので、「自分が読者になったときに読みたいと思う文章」にしたいと思っています。そしてやっぱり、絵をできる限り大きくたくさん見せたいので、文章は簡潔にがモットー。一文字でも減らすことを目指しています。

――色校正の最後の最後まで、ここはもう一文字削れるかも、と推敲していらっしゃいますね。

毎回監修の先生にお会いして専門的な知識を教えていただくのですが、自分がへーって思ったところを、できるだけたくさん取り入れたいと思っています。それをなるべく生かすにはどうしたら?と、最後まで試行錯誤していますね。

――納得がいく絵がなかなか描けないときは、どうやって解決していますか?

私は器用に描けるタイプではないんです。特に猫のときは、形がどうしてもうまく描けなかった。そんなときに趣味のようにやっているのが、先ほどもちょっと触れた、模写なんです。

↑『江戸猫浮世絵猫づくし』(東京書籍)の模写。

歌川国芳の浮世絵の猫が、線で簡潔に形を捉えていて、これを模写してみようといくつかスケッチブックに描いて。描いていくうちに、肩甲骨が大事なんだなーとか、国芳先生がどんなふうに猫を見ていたのかもなんとなく感じるところがあって、「猫ってこんな感じなんだ」ってわかる瞬間があるような気がして。そうすると、すっと突然手が動き出すみたいな感覚になるんです。あとは、もう楽しくなってきて。

――kodomoeの予告に掲載する絵は、いつも全体の原画よりもひとあし先にいただくんですけど、まだ描き始めの絵だから、少しぎこちなくて、ダメ出しをした記憶が……(笑)。

「思い切って言いますが、猫っぽくないです!」って森さんに言われて、ああそうだよなって。自分でも薄々わかっていたところがあるので。模写すると、作者の感覚をそのままダウンロードできるような気がして、それが心地よくて、趣味みたいな感じでやっています。

――最後に質問をいくつか。「お仕事中に猫のテロにあうことはありますか?」

うちは4匹いますが、仕事場には入れないようにしているので、基本、テロはないですね。でも、仕事以外のときは、リビングで洗濯物をたたんでいれば洗濯物の山の中に猫が入っていたりとか、絵本のモチーフにしていたものを食べられちゃったりしたことなどあります。

↑大森家の4匹は『ねこのずかん』のモデルも務めました。左より、チョビ、トム、モコ、ニィ。

――「色鉛筆は、有名メーカーの高級色鉛筆のほうがいいでしょうか?」

これがいいという正解はないのかなと思います。安くて少ない色数でも、レトロな感じの風合いで描くことができます。画材メーカーの色鉛筆は、発色や描き心地がよかったり、やわらかいものから固いものまであって、選択の幅が広がります。ホルベインも私はやわらかくてのりがいいところが気に入ったので、画材屋さんで試してみて、これはというのを選ばれるのがいいのではないかと思います。

――紙は画材や描く素材によって変えていますか?

フランスのアルシュという版画用紙を使っているのですが、今まさに検討していたところです。ほかにもいい紙があるんじゃないかと。

――大森さんが絵を描くうえで一番大切にしていることはなんでしょうか。

パンだったらパンと、猫だったら猫と、「仲良くなろう」という気持ちで描いています!

――本日は長時間、ありがとうございました。

 

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Profile

おおもりひろこ/1974年、神奈川県生まれ。東京藝術大学大学院美術研究科油画専攻修了。絵本に『なにからできているでしょーか?』、「へんなえほん」シリーズ(以上白泉社)、「よこしまくん」シリーズ(偕成社)、『ぼく、あめふりお』(教育画劇)、『ちかてつもぐらごう』(交通新聞社)ほか多数。埼玉県さいたま市在住。夫、高校生・中学生の息子との4人ぐらし。猫4匹+アカハライモリ1匹も同居中。
Twitter:@omorihiroko
HP:「いりたまごセバスチャン」https://iri-seba.com/

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