「第13回MOE絵本屋さん大賞2020」の表彰式をオンラインで開催! 世界の価値観の変化を見つめた作品に注目
全国の絵本屋さんにアンケートを実施し、新刊絵本のベスト30を決定する「MOE絵本屋さん大賞」。新型コロナウイルスの影響により、2020年12月28日に初めてオンラインで表彰式が行われました。第13回目となる今回は、受賞の常連となっているヨシタケシンスケさんや工藤ノリコさんの他、昨年『なまえのないねこ』で第1位となった町田尚子さんや、アーティスティックな作品を次々と生み出しているjunaidaさんの新作もランクイン。他にも、世界9か国で出版されている『ママはかいぞく』の翻訳本など、注目の作品が集まりました。
■第13回MOE絵本屋さん大賞2020 ベスト10
第1位 『あつかったら ぬげばいい』ヨシタケシンスケ/作(白泉社)
第2位 『パンどろぼう』柴田ケイコ/作(KADOKAWA)
第3位 『の』junaida/作(福音館書店)
第4位 『ねこはるすばん』町田尚子/作(ほるぷ出版)
第5位 『ノラネコぐんだん カレーライス』工藤ノリコ/作(白泉社)
第6位 『ママはかいぞく』カリーヌ・シュリュグ/文、レミ・サイヤール/絵、やまもとともこ/訳(光文社)
第7位 『ねぐせのしくみ』ヨシタケシンスケ/作(ブロンズ新社)
第8位 『わたしのわごむはわたさない』ヨシタケシンスケ/作・絵(PHP研究所)
第9位 『やねうらべやのおばけ』しおたにまみこ/作(偕成社)
第10位 『もしものせかい』ヨシタケシンスケ/作(赤ちゃんとママ社)
この1年、コロナ禍に直面した年だったこともあり、さまざまな変化や環境に影響されてきた人たちに寄り添うような作品が印象的でした。
第1位、7位、8位、10位と今年も複数の作品で受賞したヨシタケシンスケさんは、「『あつかったら ぬげばいい』を作っている途中にコロナで世の中がガラッと変わって、付け足したページがあります。『世の中が変わってしまったら、自分も変わればいい』という一節です。自分も変わらなきゃいけない状況になったときに、ちょっとでも自分が楽になれるように、少しでも自分がいい方向に変えてしまえばいいじゃないかという、ぼく自身が言ってほしかった言葉を書いていたんだと改めて思いました」とコメントされていました。
第6位の『ママはかいぞく』は、病気と闘うママを海賊に見立てた、家族で前向きになれるお話です。作者のカリーヌ・シュリュグさんは「この本を書いたのは、癌と闘っている親御さんやその家族が、子どもたちに病気について話すときの助けになるのではないかという思いがあったからです。この賞は、日本そして世界中で病気と闘っているすべての『ママかいぞく』の方々に捧げたいと思います」と話していました。
第9位の『やねうらべやのおばけ』は、ひっそり一人暮らしを楽しんでいたおばけのところに、毎日のように女の子がやってくるお話。作者のしおたにまみこさんは、6年前、新しい友達が欲しいと思った気持ちをきっかけにこの絵本を描き始めたそう。「私自身縄張り意識が強く、変化が苦手。変化というのは面倒くさくて、まず嫌だと感じてしまうことから始まる気がします」というしおたにさん。お話の中で、おばけの気持ちが変化していくところが見どころとなっています。
表彰式の全コメントは、YouTube白泉社チャンネルで視聴することができるので、ぜひご覧ください。新人賞とパパママ賞の発表も同時に行われています。
新人賞、パパママ賞の第1位は……
新人賞の第1位は『INSECT LAND ホタルのアダムとほしぞらパーティー』(講談社)。昆虫番組でも熱く昆虫愛を語る俳優・香川照之さんが作る絵本INSECT LANDシリーズの第1弾。昆虫好きならではのこだわりが随所に見られる作品で、ホタルが主人公のこの本では、暗くすると光るページがあるのが特徴です。動画では、香川照之さんの受賞メッセージも視聴できます。
パパママ賞の第1位は、『ノラネコぐんだん カレーライス』(白泉社)。0~6歳が対象のノミネート絵本の中から『kodomoe』の読者のweb投票で選ばれました。ご協力いただいた皆さま、ありがとうございました! 作者の工藤ノリコさんは「ちびっ子のみんながいつもおうちで食べているカレーにくらべて、だいぶワイルドな状況のカレーですが、いつかみんなが大人になり、インド風の雰囲気のカレーと出会ったときに『ノラネコのジャングルのカレーみたい』と楽しく思い出してくれるかも知れないと思いました」と受賞コメントを寄せていました。
「第13回MOE絵本屋さん大賞2020」の全作品は現在発売中のMOE2月号で、パパママ賞については1月7日発売のkodomoe2月号(ともに白泉社)に特集されているので、読んでみてくださいね。
文/日下淳子(編集ライター・元保育士)