「ノラネコぐんだん」の絵本ができるまで。工藤ノリコさんが作品に込めた思い【後編】
2020年11月18日

「ノラネコぐんだん」の絵本ができるまで。工藤ノリコさんが作品に込めた思い【後編】

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11月6日に『ノラネコぐんだん ケーキをたべる』『ノラネコぐんだん おでかけシールブック』『フィギュア付きミニ絵本 ノラネコぐんだん パンこうじょう』(いずれも工藤ノリコ/作 白泉社)が発売になりました!
そこで、過去のkodomoe本誌から、作者・工藤ノリコさんのこだわりと愛情がつまった「ノラネコぐんだん」の絵本づくりに密着取材した記事をご紹介します。

絵本『ノラネコぐんだん おすしやさん』(取材はkodomoe2015年10月号の別冊付録のときのもの)が完成するまでの前編では、アイディアをまとめ、世界観を作り、そして作画していくという過程をたっぷりと見せてもらいました。
今回はいよいよ着色に入り「いんさつこうじょう」へ! さらに、作者・工藤ノリコさんへのインタビューや工藤さんを育てた3冊の絵本についてもおうかがいしました。

STEP-04
“ノラネコワールド”が少しずつ明らかに

着色はキャラクターから始め、小物、背景の順番で塗り進めていきます。
「塗る前には必ず別の紙に試し塗りをして、イメージにぴったり合う色を探ります」と、工藤さん。また、ひとつの作品の中で色合いがずれてしまわないように、同じ色を使うキャラクターやモチーフが登場する部分は、一度に複数の場面を塗っているのだとか。
すみずみまで緻密でありながら、温かく、やさしい風合いの工藤さんの絵は、もうすぐ完成を迎えます!

「ノラネコぐんだん」の絵本ができるまで。工藤ノリコさんが作品に込めた思い【後編】の画像1

絵が汚れないように筆を持つ手の下に紙を敷きます。こちらの紙、よーく見ると、あの作品のキャラクターがいます!

「ノラネコぐんだん」の絵本ができるまで。工藤ノリコさんが作品に込めた思い【後編】の画像2

「ノラネコぐんだん」の絵本ができるまで。工藤ノリコさんが作品に込めた思い【後編】の画像3

着色されたキャラクター(右)を背景が彩ります(左)。ノラネコぐんだんの反省の色は相変わらず見られませんね……

 

CLOSE UP!

「ノラネコぐんだん」の絵本ができるまで。工藤ノリコさんが作品に込めた思い【後編】の画像4この黄色は、もしかして……
そう、正解はノラネコぐんだんの黄色!
ふたつの黄色を混色し、何度も試し塗りをして色合いを確認しながらノラネコカラーを作ります。筆は、日本画用の筆を使っています。

「ノラネコぐんだん」の絵本ができるまで。工藤ノリコさんが作品に込めた思い【後編】の画像5

STEP-05
ノラネコぐんだんが「いんさつこうじょう」へ

ブックデザイナーが文の位置などをレイアウトしてから、印刷所に入稿します。その後、実際に絵本に使う紙に試し刷りされた色校正紙で色合いなどをチェック。こうしたやりとりを重ね、絵本づくりの最終工程である印刷作業に入ります。
ここからは印刷所のみなさんの職人技が光ります。原画の雰囲気を限りなく忠実に再現してくれる印刷所のみなさんは、絵本づくりになくてはならない存在。印刷された紙は製本され、付録絵本が完成しました!

「ノラネコぐんだん」の絵本ができるまで。工藤ノリコさんが作品に込めた思い【後編】の画像6

版と呼ばれる印刷物の大元。カラーの印刷物はC、M、Y、Kという4色のインキを刷り重ねて色を再現するので、4枚の版が作られます

「ノラネコぐんだん」の絵本ができるまで。工藤ノリコさんが作品に込めた思い【後編】の画像7

印刷機に紙やインキ、版をセットし、印刷開始。途中で機械を微調整し、理想の色に近づけます

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刷りたてホヤホヤの「おすしやさん」。ノラネコぐんだんのちょいワルぶりが次々と印刷機から出てくる様子は、まさに圧巻!

CLOSE UP!

「ノラネコぐんだん」の絵本ができるまで。工藤ノリコさんが作品に込めた思い【後編】の画像9微妙な色合いの違いも見逃さない
数十枚ほど刷ってから、色校正紙と見比べながら修正部分が直っているかを印刷所の担当者の方が確認。
「いいものを作りたい」という思いは、絵本づくりに携わる全員に通じているのです。

 

工藤ノリコさんインタビュー
絵本の世界に夢中になれるものを

「ノラネコぐんだん」の絵本ができるまで。工藤ノリコさんが作品に込めた思い【後編】の画像10

「おすしやさん」の原画。絵そのものが物語を語り出すような、すこやかな力にあふれています

絵本の中でたっぷり遊べば それが体験のひとつになる

大人になってからあらためて実感していることなのですが、小さな子どもは、自分ひとりだけの力で行ける場所や世界はごく限られていると思うんです。でも、絵本が一冊でもそばにあれば、本を開けばいつでも別の世界へ行くことができる。たったひとりで物語の中に入り込んで、笑ったり、驚いたり、いろいろな感情を味わえます。
つまり、絵本を通じて現実とは別の世界を体験できるのです。

私自身の子どもの頃を思い返してみると、幼稚園に通ったりしているような、現実としてある自分の日常生活とはまったく別の世界が絵本には広がっていて、それに夢中になったものでした。
当時、好きだった絵本はいろいろありますが、共通しているのは、作品そのものが持つ世界観が色濃くあること。まだ字も読めなかった頃ですし、母や先生に読み聞かせもたくさんしてもらっていましたが、なぜか自分で読んでいたという感覚がはっきりとあるんです。それはきっと、文章からストーリーを理解していたというより、純粋に絵そのものだったり、作品の根底に流れる状況や雰囲気にひきつけられていたんですね。そこでひとり遊びをしていたという感じでしょうか。

私が絵本を作るときにいつも考えていることは、自分の内にある物語の世界観をいかにしてうまく伝えるかということです。でも、それと同じくらい大切に思っていることがあって、それは、読んでくれる子どもの心に寄り添えるようなものを作ること。元気な気分のときは楽しく読んでもらえたらそれがいちばんうれしいですし、たとえそうではないときでも、少しでも笑えて、明るい気持ちになってもらえたらと思っています。

絵本の中の世界は、架空のものかもしれません。それでも、その世界を心がおもむくままに自由に飛び回り、たっぷりと遊ぶことは、子どもにとって大事な体験のひとつになるような気がします。大人には、子どもがそこでどんな体験をしているかまではわかりません。だからこそ、子ども自身のフィーリングで絵本から何かを感じることは、子どもの個性につながったり、元気や勇気の源にもなると思うのです。

私を育ててくれた絵本

「ノラネコぐんだん」の絵本ができるまで。工藤ノリコさんが作品に込めた思い【後編】の画像11『三びきのやぎのがらがらどん』
マーシャ・ブラウン/絵 せたていじ/訳
福音館書店 本体1100円+税
 
ノルウェーに伝わる昔話のひとつ。「子どもの頃はとてもこわく感じたものですが、困った状況を乗り越える面白さも味わえました」

「ノラネコぐんだん」の絵本ができるまで。工藤ノリコさんが作品に込めた思い【後編】の画像12『じてんしゃにのるひとまねこざる』
H.A.レイ/文・絵 光吉夏弥/訳
岩波書店 本体640円+税
 
自転車をもらい、大喜びのこざるのジョージ。「何度もくり返し読んだ作品。奔放なところはノラネコぐんだんに通じるかもしれませんね」

「ノラネコぐんだん」の絵本ができるまで。工藤ノリコさんが作品に込めた思い【後編】の画像13『てぶくろ』
エウゲーニー・M・ラチョフ/絵 内田莉莎子/訳
福音館書店 本体1000円+税
 
手袋に次々と動物が入り込み、とうとうはちきれそうに……。「子どもながらに異世界や不思議な夢を見ているような感覚になりました」

「ノラネコぐんだん」の絵本ができるまで。工藤ノリコさんが作品に込めた思い【後編】の画像14

工藤さんが愛用している画材。着色にはやわらかな雰囲気に仕上がる透明水彩絵具を使っています。

 

INFORMATION

「ノラネコぐんだん」の絵本ができるまで。工藤ノリコさんが作品に込めた思い【後編】の画像15

※イラストはイメージです。

『ノラネコぐんだん おすしやさん』
工藤ノリコ/作
白泉社 本体1200円+税
 
まわるおすしが気になったノラネコぐんだんが、またまたなにやらたくらんでいるようす。夜中にこっそりおみせにしのびこみ、ニャーニャー、ドッカーンと大あばれ! 2015年11月刊。

集めよう! ノラネコぐんだんシリーズ

「ノラネコぐんだん」の絵本ができるまで。工藤ノリコさんが作品に込めた思い【後編】の画像16「ノラネコぐんだん」の絵本ができるまで。工藤ノリコさんが作品に込めた思い【後編】の画像17

『ノラネコぐんだん カレーライス』
『ノラネコぐんだん きしゃぽっぽ』
工藤ノリコ/作
白泉社 本体各1200円+税

ノラネコぐんだんが巻き起こす破天荒な騒動に子どもも大人も大爆笑の大人気シリーズです。

 

PROFILE
くどうのりこ/1970年神奈川県生まれ。絵本作家、漫画家。絵本に「ペンギンきょうだい」シリーズ(ブロンズ新社)、「ピヨピヨ」シリーズ(佼成出版社)ほか多数。読み物に「マルガリータ」シリーズ(あかね書房)、漫画に『ノラネコぐんだんコミック』(白泉社)など。11月6日に『ノラネコぐんだん ケーキをたべる』など3冊を発売。

 

撮影/岡森大輔 編集協力/菅原淳子(kodomoe2015年10月号掲載)

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