夏の免疫育て=育免(イクメン)で、暑くて長い季節を乗り切ろう!
2025年7月31日

夏の免疫育て=育免(イクメン)で、暑くて長い季節を乗り切ろう!

暑すぎる上に秋まで続く長い夏は、子どもにとっても親にとってもしんどい季節。実は夏には免疫力を低下させるリスクがたくさん潜んでいることをご存知ですか? 夏を元気に乗り切るために、家族で免疫力育て=育免(イクメン)! 生活の中で取り入れられる育免アクションを、小児科医の工藤紀子先生に教えていただきました。

ヘルパンギーナ、手足口病…夏の感染症は、免疫力低下のせい!?

「冬にはインフルエンザのような乾燥に強いウイルスが流行しますが、夏には暑さや湿度に強いウイルスがはやります。例えば、水ぶくれのできるヘルパンギーナ、結膜炎や高熱をともなうプール熱(咽頭結膜熱)の原因となるアデノウイルス、手足口病を引き起こすエンテロウイルスなどです。夏は半袖・半ズボンなど肌の露出が増えるぶん、皮膚や粘膜を通じた接触感染のリスクが高くなります」と工藤先生。

「また、暑さで食欲が落ちると、ついアイスやそうめんなど、糖質中心ののど越しがよく食べやすいものに偏りがち。その結果、たんぱく質・ビタミン・ミネラルなど免疫を支える栄養素が不足しやすくなります。
さらに、冷房の効いた室内と暑い屋外とを行き来することで、体温調整を司る自律神経にも負担がかかり、免疫力が落ちやすい状態になるのです

免疫力育て=イクメンは幼児期が大事!

実は、免疫力を育てるには幼児期がとても大事。

「免疫とは、体の中に異物や病原体が入ってきたときに、適切に反応して排除する力のことです。免疫細胞は生まれてから少しずつ分化・成熟していき、3〜4歳ごろから反応が安定してくると言われています。乳幼児期に多くの抗原(ウイルスや細菌、花粉などの異物)にふれることで、免疫の土台が育まれていきます。
免疫の仕組みは、思春期にかけて徐々に完成していきますが、特に3〜6歳ごろの幼児期は免疫の『方向づけ』に重要な時期。この時期の栄養や生活習慣、人との関わりは、将来の感染症やアレルギーに影響を与える可能性があります」
中でも注意したいのが、今の幼稚園・保育園~小学校低学年の子どもたち。
「この世代は、コロナ禍で人との接触や集団生活の機会が減り、本来であれば経験するはずだった感染症にかかる機会が限られていました。感染症を通して免疫を学んでいく機会が少なかった可能性があるため、今こそ『免疫を育てる=育免』という視点を大切にしてほしいと思います」

夏休みに親子で取り組みたい! 
育免アクション3

育免アクションその1
夏のごはんとおやつは「シンバイオティクス」!

体の中で免疫の大きな部分を担う腸。腸の調子を整えることは、「育免」に直結します。

腸の調子を整えるには、ビフィズス菌や乳酸菌など腸にいい菌を生きたまま摂ること、さらにその菌のエサになる食物繊維やオリゴ糖などを一緒に摂ることがポイント。これを『シンバイオティクス』と言います
暑くて食欲が落ちがちな夏でも食べやすく、シンバイオティクスを意識したレシピを教えていただきました。
「ヨーグルトと甘酒はともに発酵食品、そこにオリゴ糖の入っているバナナを足したスムージーは自然な甘みもあって、冷やしていただくと夏のデザートにピッタリ。バナナのかわりにきなこもおいしいですよ。
食欲のない朝ごはんには冷や汁ごはんもおすすめ。冷たくしたみそ汁にすりごま、きゅうり、ツナ、雑穀ごはんを入れて。大人はネギや大葉を入れても。飲み物として牛乳をプラスすれば、カルシウムも摂れます。
夏の定番、そうめんなら、納豆とおくら、豚しゃぶをのせて食べれば栄養バランスもバッチリです」

育免アクションその2
エアコンを上手に使って質のいい睡眠を


「エアコンをつけっぱなしで寝るのは体に悪い」と聞いたことがある方もいるかもしれません。でも、暑さで寝苦しくなると睡眠の質が下がり、結果的に免疫力の低下につながることもあります。
「エアコンをひと晩中つけていても、体に悪いわけではありません。大切なのは“設定”と“環境”です。
快適な睡眠のためには、室温は25~28℃、湿度は40~60%がベストと言われています。ただし、エアコンの性能や部屋の広さ・気密性によって、設定温度どおりにいかないことも多いので、温湿度計を用意して、実際の室温や湿度を確認すると安心
また、子どもが寝汗をびっしょりかいている場合は「暑いサイン」。風向きを調整したり、設定温度を少し下げるなどの工夫が必要です。
さらに、夏は日の出が早いため、朝早く目覚めてしまい、睡眠時間が不足しがち。遮光カーテンを使って部屋を暗く保つことで、睡眠時間を確保しやすくなります」(工藤先生)

育免アクションその3
ゲームや動画は1日2時間までに! 室内でも体を動かそう

育免には適度な運動が大切。しかし夏休みは時間がたっぷりあるため、ついゲームや動画の時間が増え、体を動かす時間が減りがちです。
「ゲームや動画の視聴時間は1日2時間以内にするのが望ましいです。
また、体を動かす要素のあるゲームを選んで遊ぶのも良い方法。
『子どもがゲームをやめられない』という悩みもよく聞きますが、ゲームには区切りがあるので、『〇分間』で終わらせるのが難しい場合は『このターンが終わったらやめようね』など柔軟にルールを決め、守れたらしっかりほめてあげることが大事です。
ルールのハードルを上げ過ぎず、少しがんばれば守れそうな程度に設定しましょう。
さらに、ママパパも一緒にゲームに興味を持って遊んでみることもポイント。そうするとお互いの妥協点が見つかりやすくなるかもしれません」

まとめ
夏の疲れが溜まったまま、免疫力が低下した状態で秋を迎えると感染症にかかりやすくなったり、だるさが続く「秋バテ」の症状が出ることがあります。さらに、秋冬はインフルエンザなどの感染症が流行しやすいため、家族みんなで夏の間から育免に取り組むようにしましょう!

教えてくれたのは
工藤紀子先生
くどうのりこ/小児科医、医学博士。順天堂大学医学部卒業、栄養と子どもの発達に関する研究で博士号を取得。クリニックでの診療では年間のべ1万人の子どもを診察するかたわら、子育てママパパの育児の相談にのる。2児の母。

イラスト/タカヒロコ

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