子どもは意外と丈夫です 「清潔にしすぎない」が元気な体を作る!
本当の健康って、何だろう?
元気な体を作る “カイチュウ先生”格言
過剰な除菌・抗菌はやめ菌と“仲良し”の生活を
パンダの赤ちゃんは生まれてすぐ土をなめます。これによってエサである笹を消化・分解する菌を腸内に取り込みます。コアラの赤ちゃんも、ユーカリを消化する菌を土から取り込みます。人間もまた同じで、生きていくのに大事な菌は土など身の回りから取り込む必要があるのです。すべての菌を排除するのは、生きるために必要な機能を獲得できないことにつながります。最近、世界的には菌の働きが見直されていて、アメリカでは保育器に入っている未熟児の赤ちゃんに、親がキスをするように指導するそうですよ。無菌よりも、親の菌をもらうことで元気な体になれることが分かってきたからです。菌を何でもかんでも悪者にせず、仲良くつき合っていくことが、結果的に子どもを強くするんですね」
「キレイはキタナイ、キタナイはキレイ」と覚えよう
「最近の日本人には『洗いすぎ』による炎症が増えています。例えば手には常在菌という菌がいますが、これは皮脂をエサにして皮膚を中性に保ち、病原菌などの外敵が入ってこないように守ってくれます。ところが、1日に何回もハンドソープで手を洗ったり、除菌シートで手を拭いたりしていると常在菌がゼロになり、皮脂も失われてカサカサに。結果、皮膚炎やアトピーの原因にもなるのです。シャワー付きトイレも同じで、1日に何度もシャワーでおしりを洗っていたら、おしりを守る菌まで洗い流してしまい、逆に雑菌が繁殖しやすい状態に。つまり、『キレイ』を意識した行動が、逆に『キタナイ』を招いている。反対に、キタナイと嫌う菌が、体をキレイ=健康な状態に保ってくれている。無菌=キレイという思い込みは捨てましょう!」
「汚い」を排除しすぎるとかえって病気になりやすくなる!
大きさは元気さの証!子どものうんちを愛おしもう
「自分でトイレができるようになるまでは、ママのおむつ替えも大変。でも、子どもが大きなうんちをするのは腸が元気な証拠です。うんちの内訳は、消化されなかった食べ物、水分の他、1/3は腸内細菌とその死骸。消化されなかった食物繊維が腸内の余分な栄養素や有毒物質、腸内細菌などを巻き込みながら、うんちとして排泄されます。腸が元気に動くためには、腸内細菌がしっかり働き、腸の中をいい状態に保ってくれていることが大事なのです。そんな健康のバロメーターであるうんちを「汚い、汚い」とママが言っていると、子どもも排泄に対するイメージがどんどんネガティブなものに。排泄、うんちを過剰に汚いものと扱わず、『生きている証』と喜びましょう!」
うんちの1/3は腸内細菌とその死骸。大きなうんちは腸内細菌が多いということ!
菌がたくさん住んでいる食べ物こそが体を強くするカギです
「幼児期に一生の腸内細菌の種類が決まることは前述の通り。動物や土に触れること以外では、みそやしょう油などの発酵調味料や、納豆、漬物、ヨーグルトなどの発酵食品を食べることでも腸内細菌を増やすことはできます。大人になってからこうした発酵食品を食べても、腸内細菌の種類を増やすことは残念ながらかないませんが、決してムダではありません。食べ物から取った菌が、自分が本来持っている腸内細菌と似た種類だと、活動を助ける働きをしてくれるからです。それには、1種類に偏らずできるだけ多くの種類の発酵食品を食べ、自分の腸内細菌とマッチする確率を上げることがポイント。親子で積極的に発酵食品を食べ、元気な体を作りましょう。」
藤田 紘一郎先生
ふじたこういちろう/東京医科歯科大学教授。専門は寄生虫学、熱帯医学、感染免疫学。寄生虫の有用性を証明するため、自らのお腹にサナダムシを飼い、「カイチュウ先生」の異名も。