正しい英語はネイティブスピーカーから習うほうがいい? 検証! 語学教育の都市伝説
子どもにやらせたい習いごとで常に上位に入るのが、英語です。「これからは英語くらいできなくちゃ!」とは思うけれど、早く始めないと手遅れ? そこで、巷にあふれる語学教育の都市伝説を検証します!
言語獲得の「臨界期」って何ですか?
「臨界期」とは、ある能力の発達は一定の年齢までで、その時期を過ぎると習得が困難になるとする概念です。人間社会から隔絶されて育った子どもが、後に教育を受けても言葉を話せなかった事例から、11~12歳頃を、(母語の)言語獲得の臨界期とする考えもあります。
ホント?
臨界期を過ぎると、
ネイティブ並みの英語力は身に付かない
科学的根拠はありません。
思春期以降のほうが
早く習得できるケースも
外国語の習得に、臨界期といった特別な期間が存在するというエビデンスはありません。認知力が高まる中学生以降のほうが、母語※である日本語を介して、文法や語彙を分析的に理解することができるため、幼児期より習得するスピードが早まるという研究結果も。
※母語……幼少期より、家庭内で親が話すのを聞いて自然に身に付ける言語。母国語(自分が所属する国の言語)と区別する。
ホント?
正しい英語を身に付けるには
ネイティブスピーカーから習うほうがいい
英米の英語=正しい英語では
ありません。英語を通して
多様性を学んで
北米やイギリスなどに住む人の話す英語が、正しい英語という考えが根強くありますが、世界で英語を使う人口は、英語を母語としない人のほうが圧倒的多数です。発音やアクセントなども実にさまざま。これからは、英語の多様性に柔軟に対応できる力が求められます。
英語の習得に関わるのは
年齢よりも興味や関心
「グローバル社会で生き抜くには、英語力はマスト!」。そんな声が浸透するにつれ、「胎教で英語を聞かせるべき」「1歳過ぎると英語耳は育たない」といった都市伝説も、と話す久保田先生。
「まず、英語耳というものに科学的根拠はないので、安心してください。小学生からと中学生からでそれぞれ英語学習を開始したグループの、その後の熟達度を長期にわたって調べた研究では、両者に有意な差はありませんでした。また、年齢よりも学ぼうとするモチベーションのほうが、熟達度により強く影響することもわかっています。大人になってから、音楽や映画などをきっかけに英語に興味を持ち、話せるようになったというケースもよくありますよね。
英語は、世界の多くの人とつながり、気持ちよくコミュニケーションを取るためのツール。幼児期に英語を学ばせるなら、まずは『楽しい! 面白い!』と、興味を引き出してあげましょう。言葉は周りの人とのやりとりから覚えていくものです。英語のDVDを見せるときも、ときには子どもと一緒に声に出してみるなど、一方通行にならない工夫をしてみては。異なる文化への理解や、相手に伝えたい、相手の話すことを理解したいという思いが、コミュニケーション力を育むのです」
教えてくれたのは
久保田竜子 先生
くぼたりゅうこ/カナダ・ブリティッシュコロンビア大学教授(応用言語学)。公立中学・高校の英語教諭を経て、トロント大学で博士号を取得。著書に「英語教育幻想」(筑摩書房)など。
イラスト/うすみ(kodomoe2023年4月号掲載)
