常識が変わる!?「叱っても学習効果はない」はホント?【最新号からちょっと見せ】
親に叱られたとき、子どもは何を考えている? kodomoe6月号では、『〈叱る依存〉がとまらない』(紀伊國屋書店)などの著者 村中直人先生に、最新の研究結果から「叱る」ことの効果や働きについてうかがいました。webではその中から、「叱っても学習効果はない」に注目します!
叱っても学習効果はない
学んでいないので繰り返してしまう
叱るときの親は、一刻も早く改めさせたいと思い、叱られている子どもは、一刻も早く逃れたいと思って相手に従う。そのため、親は「叱ってうまくいった」と錯覚しがち。子どもは学んでいないので同じことを繰り返し、親は何度も叱ることに。
謝る理由は「叱るのをやめてほしいから」で、「叱られている内容」ではないことがほとんど。
「叱ればちゃんとする」は
実は錯覚です
「最初にお伝えしたいのは、叱っても子どもは学ばない、ということです」と村中直人先生。
「叱られているときと、深く考えているときとでは、脳内のメカニズムが異なることが最近の研究で明らかになっています。
危険を感じたとき、野生動物は生き延びるため、瞬時に『逃げる』か『戦う』かを選ぶ。じっくり考えている余裕はないので、即行動するようにできています。
親に叱られることは、子どもにとっては逆らえないこと。小動物が天敵に襲われるに近い状態です。物理的に逃げられないとわかると、子どもは相手が望む行動をする。言われた通りに動いたり、申し訳なさそうに謝るのは、ストレスフルな状態を回避するための行動なのです。
ところが親の目には、『叱ればちゃんとできる』と映るため、叱ることには一定の効果があると錯覚してしまう。そこに『叱る』の難しさがあります。『しつけのためには、叱ることも必要』といった考え方が根強くあるのは、そのあたりにも理由があるのです。
また、『怒る』と『叱る』は違うという考え方もありますが、子どもにストレスがかかるという意味であまり違いはありません。子どもが学ぶためには、自主的に考えられる環境が必要です」
教えてくれたのは
村中直人先生
むらなかなおと/臨床心理士・公認心理師。人の神経学的な多様性に着目し、脳・神経由来の異文化相互理解の促進、および働き方や学び方の多様性が尊重される社会の実現を目指して活動。著書に『〈叱る依存〉がとまらない』(紀伊國屋書店)など。
イラスト/こにしかえ(kodomoe2023年6月号掲載)