
「娘のごはんづくり、しんどい」が、きっかけに。家庭料理のテイクアウトサービス「マチルダ」を始めた理由【親になったから、この仕事始めました・1】
子どもが生まれて、育てていく中で困りごとや課題が見つかったり、「もっとこうならいいのにな」との思いが芽生えたり。それが、その後の仕事や生き方につながったママパパたちのストーリーを紹介する新連載、始まります!

Vol.1「マチルダ」創業者 丸山ゆかさん
「夕飯を毎日用意するのって本当に大変……」そんな自身の悩みから、家庭料理のテイクアウトステーション事業「マチルダ」を始めた丸山ゆかさん。「子どもたちの日常を豊かに」を目標に事業を拡げ、さまざまなことにチャレンジしています。その原動力と、今後の展望をお聞きしました。
きっかけは「夕飯づくり、しんどい」でした
「マチルダ」は2021年5月にスタートした、日替わりの夜ごはんのテイクアウトサービス。その日に手作りした夕飯を近所のステーションで受け取れるという利便性はもちろん、家庭料理のような素朴なおいしさ、メニューのバリエーションの豊かさ、必要なときに必要なだけ注文できる使い勝手の良さなどで、創業から5年で1日5500食を提供するまでに成長中。
「このサービスを始めようと思ったきっかけは、娘が離乳食の時期を過ぎ、いろいろなものを食べられるようになったときに『あれ、食べさせられるものがない』と感じたことでした。いわゆる幼児食みたいなものですね。
『大人の食事を味付け前に取り分けて、味を薄くして与える』みたいに育児書に書いてあるのですが、そもそも私は料理が苦手で、当時から食事はテイクアウトやデリバリー、外食なども多かったんです。だから取り分けて味つけを変えるとかは難しいし、かと言って毎日デリバリーでもちょっと……と。
で、しかたないから鍋みたいな簡単なものにするんですけど、そうすると娘のごはんが鍋ばっかりになっちゃう。で『え、みんな子どものごはんどうしてるの? 毎日メニュー変えて食べられるものを作るって大変すぎない?』とずっと思っていました」
「今日のごはん何?」に応えたい

マチルダの夕ごはんの一例
「ごはんを何とかしたい」と、いろいろな食のサービスを試していたという丸山さん。でもどれも、課題が完全にスッキリするということがなかったそう。
「冷蔵冷凍のお惣菜セット、料理代行サービス……いろいろ利用してみました。罪悪感から解放されるし、自分の手間もなくなるし、私自身はとても満足していました。
なのに、どれも3日目くらいから夫と娘の食べが悪くなるんです。なんでだろう?と思って聞くと、まとめて届いたり作り置きをしてあるものだとじきに飽きてしまう、ということが分かりました。
ふたりは純粋に『今日の夕ごはんなに?』というワクワクを求めていたんですね。夫も娘も自分たちが作るわけではないのでそういうことが言えるわけなんですが……。でも、それを聞いて『なるほど』と気が付きました。
それが『毎日日替わりの家庭料理を、わが家の量と頻度に合わせてテイクアウトできる』というマチルダの今のシステムにつながりました」
1週間ごとのメニューが発表され、子どもが好きなメニューのときだけ、必要な日だけ、といった感じで家庭の都合に合わせて注文できるのがマチルダの特徴。
「例えば仕事の詰まり具合などで、今週は忙しいから毎日利用しよう、来週は余裕があるから月木だけとか、自由にアレンジできるようにしています。
各メニューごとにフィードバックが気軽にできるようになっていて、解答率は15~20%ほど。メニューの人気投票も定期的に実施していて 、人気があったものは再登場させたりしつつ、常に新しくておいしいメニューを開発しています。
野菜もしっかり摂れるように栄養士がメニューを考えていて、わが家でもマチルダをめっちゃ活用しています(笑)」
子どもを、家族を巻き込んで豊かな体験を

「おつかいチャレンジ」の様子
マチルダの大きな特徴は、家の近所のステーションで受け取れるという点。ステーションでは料理の受け取りの他、子どもが楽しめるイベントをおこなったりも。
「人気があってよく開催しているのは、ステーションでの受け取りを子どもがする『おつかいチャレンジ』。
以前から、ママパパと一緒に受け取りに来たお子さんが、QRコードをピッとやりたがったり、受け取った食事を自分で持ちたがるといった姿をたくさん見てきて、『子どもってやりたいんだな、関わりたいんだな』と。
『自分がピッした』『自分が運んできた』があることで、食べがよくなったりするんですよね。『子どもが喜んでおいしそうに食べている顔を見ると、“作らなくてごめんね”という気持ちにならずに済む』というお客様の声もありました。
こうした経験て、子どもたちの日常、ひいては家族の毎日を豊かにすることにつながると思うんです。、子どもたちが大人になったときにそういう時間が循環するんじゃないかな、その循環で社会がよりよくなっていったらいいな、と。
だから中心であるテイクアウトサービスステーション事業のほかにも、体験型のイベントやワークショップなどもいろいろ開催しています。『親子の時間をより充実させる』という目的で、これからもいろいろ考えてご提供していきたいです」
「こうだったらいいのに」の思いを大事に

「マチルダ」── 一見、食のサービスだとは分からないような名前には、丸山さんたち創業者が込めた思いがあるそう。
「イギリスの作家ロアルド・ダールの作品『マチルダは小さな大天才』の主人公がマチルダ。大人に守ってもらうのではなくマチルダが自分で自分の人生を切り開いていく物語です。子どもが本来持つエネルギーを存分に発揮できる社会であるために、私たち大人にできることは何だろう、というのを考えて社名にしました。
起業したときに、周りの先輩ママパパたちには『子育ての課題って“のど元過ぎれば”だよ』ってたくさん言われました。
その時『あ、だから解決されないままずっと残り続けているんだ』と思ったんです。でも困っている人がいるなら解決する価値があるし、私自身が当事者だったからこれだけのエネルギーを注いで事業を始めることができました。
娘が6歳くらいまでは、仕事のせいで一緒に過ごす時間が少ないと感じさせてしまい、『もう仕事しないで』と言われることもありました。
娘との出会いがきっかけで始めた仕事なのに、本人にそう言わせてしまっていたのはすごくつらかったです。
でも7歳のとき『ママの仕事ってたくさんの子どもたちにごはんを届ける仕事だよね。 それってすっごくいい仕事だね!』って言ってくれたんです。学校で先生や友達にも私の仕事のことを話しているらしくて。それが嬉しくて嬉しくて、原動力になっています。
子どもの成長につれて悩みも課題も変化していきますが、その時々に『これがあったらな』『もっとこうならいいのに』が、いろいろ出ると思うんです。
もし子どもとの出会いがきっかけで何かを始めたいと思っている人がいたら、そのときの思いやエネルギーを大事にしてほしい。
今は国や自治体の創業支援融資もいろいろあるので、チャレンジしてみる価値はあると思います」
撮影/花田梢(丸山さん) 編集協力/遊佐信子
丸山ゆか
まるやまゆか/1990年生まれ、東京都出身。九州大学経済学部を卒業後、アメリカでのインターン経験や日本でのIT関連会社での仕事を経験。娘の誕生をきっかけに「こどもを取り巻くこの社会をもっと愛情深いものにしたい」という想いから、福沢悠月氏とともにマチルダを起業。
マチルダ https://matilda.kitchen/
遊佐信子
ゆさのぶこ/編集者・ライター。成人した息子2人が幼児のころからkodomoeに関わり、現在は末娘を育児中。kodomoe本誌では発育・発達や言葉がけなどの育児系、工作や手芸などの手作り系、親子のヘルス系の企画を主に担当。最近犬(ポメラニアン♀)を飼いはじめ、犬の言葉がわかる能力を手に入れたいと思う日々。






































