インフルエンザの大流行で薬不足も!? 小児科医に聞く感染予防&免疫力向上Q&A
インフルエンザが全国的に猛威を振るっています。インフルエンザ治療薬を含む薬不足も継続中で、この状況はまだまだ続きそう。そこで大事なのが予防接種と日々のケアです。家族で取り組みたいことを小児科医の細部千晴先生に教えてもらいました。
コロナ禍で感染予防を徹底した生活を送っていたために、さまざまな病原菌やウイルスにさらされず、免疫が作られない「免疫負債」という状態も、感染に拍車をかけていると細部先生。「加えて、新型コロナワクチンの子どもへの予防接種を控える傾向がインフルエンザにも及んで、インフルエンザ予防接種の接種率が低下しているという現象もあります。今、タミフルやイナビルといった抗インフルエンザ薬を含み、世界的に薬不足の状況が続いています。向こう3年間はこの状況が続くとも言われていますが、小さな子どもがインフルエンザになって心配なのは、脳炎や脳症といった重篤な合併症。これを防ぐためにも、予防接種や家庭でできる感染対策はとっても大事です」(細部先生)。
例年を上回るペースの大流行!
まずすべきは「予防接種」
インフルエンザの重症化を防ぐ第一歩は予防接種。まずは正しく知ることから始めましょう。
Q インフルエンザの予防接種、今から受けても意味ありますか?
A 今からでも遅くありません
「インフルエンザの流行は春まで継続する可能性があります。1週間以内に感染していなければすぐにワクチン接種をされることが理想です。ワクチンには重症化を防ぐという点で効果があります」
Q 子どもは2回接種しないとダメですか?
A 1回でも意味はあります
「1回でも無意味ということはありません。過去3年間、毎年2回打っている子であれば今年は1回でも大丈夫。今までにインフルエンザにかかったり予防接種を受けたことがあれば、ブースター効果(追加接種)としての効果もあります」
Q 子どもだけでも受けておけば、親は受けなくてもOK?
A 家族みんなが打つほうがベター
「集団の中で予防接種を受けた人が多ければ多いほど、感染の広がりは抑えられることが分かっています。みんなで受けることで感染の連鎖を防ぎ重症化を防げる可能性が高まります」
Q 予防接種を受けても毎年感染してしまいます。受ける意味があるのかな?
A 重症化リスクを減らすにはぜひ受けて
「勘違いされがちなポイントですが、予防接種は感染自体を防ぐというわけではなく、かかった際に重症化を防ぐ効果が認められています。小さな子が感染して怖いのは脳炎や脳症など重篤な合併症。集団免疫効果で防ぐという点で大いに意味があります」
Q 今予防接種受けたら、いつごろまで効果がもつの?
A 春までは持ちます
「データ上は、予防接種の効果は4~5か月もつと言われています。今受ければ、流行がひとまず収束すると予想される春までもちます。」
Q 予防接種の副反応が心配です。
A 赤みや腫れ、痛みが出ますが多くはすぐ収まります
「インフルエンザの副反応は、子どもに多いのは打った場所の腫れや痛み、かゆみなどです。通常は1~2日でおさまります。かかることのリスクと比べて判断するのがいいでしょう。不安がある場合はかかりつけの医師に相談してみてください」
新型コロナによる感染症対策で、子どもたちは各種ウイルスに対しての免疫が獲得できない「免疫負債」の状態に陥り、感染症にかかりやすくなっていると言われます。それだけに、日ごろからできる感染症対策はとっても大事。家族みんなで心がけましょう。
Q 手の消毒はこまめにしたほうがいいでしょうか?
A アルコール消毒ではなく手洗いでOK
「アルコール消毒は必要ありません。トイレの後や食事の前に丁寧に手を洗うだけで十分。日本の水道水には塩素が入っていてそれが消毒の役目も果たしてくれますが、さらに石鹸を使うと病原菌を落とす効果が高まります」
Q うがい薬は使った方がいい?
A やるなら水や塩水で
「実はうがいは直接感染予防になるというエビデンスはありません。でものどを潤すという点ではよいので、うがいをするならただの水か塩水で。ヨウ素入りのうがい薬は、のどの正常な組織にダメージを与える可能性があるので、使わないほうがベター」
Q 免疫力を高める食べ物ってありますか?
A ヨーグルトやチーズなどの発酵食品がおすすめ
「ヨーグルトやチーズ、納豆などの発酵食品は、最大の免疫機関である腸の調子を整えるので、積極的に食べましょう。中でもヨーグルトは、含まれる乳酸菌の作用で唾液中の免疫物質が増えることが分かっていて、感染を防ぐという観点から予防にも役立つので、継続的に食べるといいですね」
Q 免疫力を高めるために、運動は必要ですか?
A 必要です。歩いて買い物に行くだけでもOK
「適度な運動は免疫力を向上させるのに有効です。とは言え、忙しくてわざわざ運動をする時間を取れない人も多いでしょうから、例えば買い物に行く時に歩くだけでもOK。とにかく1日1回は外に出るこことを、親子で意識しましょう」
Q 人ごみにはでかけないほうがいいでしょうか?
A スケジュールにゆとりを持てば大丈夫
「年末年始に帰省したり家族でおでかけはいいと思います。ただし、予定を詰め込みすぎてハードスケジュールになると疲れが出たり、不規則な生活になると免疫力低下のリスクが。予定に余裕をもって過ごすことを心がけたいですね」
まとめ
薬不足の危機的な状況を乗り切るには、予防接種と家でのケアの両輪が大切。できることから取り組んで、家族みんなで元気な春を迎えたいですね。
取材・文/遊佐信子 Photo by AdobeStock
細部小児科クリニック(東京・文京区)院長。日本小児科学会小児科専門医。日々の診療に加えて、数多くの幼稚園・保育園の園医としても活動。著書に『改訂版 この1冊であんしん はじめての育児辞典』(朝日新聞出版)『「どうする?」がわかる 赤ちゃんと子どもの病気・ケガ ホームケアBOOK』(ナツメ出版)ほか多数。