1月のテーマは「日の出の絵本」【広松由希子の今月の絵本・3】
絵本作家で評論家の広松由希子さんの連載。毎月、テーマに沿った、おすすめ絵本をセレクトしていただきます!
1月のテーマは「日の出の絵本」
さあ、新年。最初のテーマは「日の出」です。
 実はわたし、初日の出を見た経験は、人生でまだ二度くらい。
 でも元旦でなくても、日の出を見ると、新しく清々しいきもちになりませんか?
 絵本の日の出にも、いろんなタイプがあります。
 
 まずは、最高にめでたい日の出。
 『おめでとうおひさま』を。
 なにも見えない、真っ暗な水平線が明るんで、
 「うみから とうじょう」
 「おひさま ぽん!」
 黒々した峰からも、
 「やまから とうじょう」
 「おひさま ぽん!」
 海のみんな、山のみんなと
 「おめでとう」を交わしたおひさまが
 新年の抱負をたずねます。
 「ことし みんなは どう したい?」
 四角い教育とは一線を引いた、やさしい問答。
 おひさまの懐の広さ、頭の丸さに感じ入ります。
 生きとし生けるものたちの
 やわらかな笑いに満ちた水彩画。
 きばらず、ゆるやかに迎える新年。
 小さい子どもも親もほっとする、めでたさです。
 
 『おめでとうおひさま』
 中川ひろたか/作 片山健/絵
 小学館 定価1,365円 2011
 『ととけっこう よがあけた』は、
 赤ちゃんからいっしょに楽しめて、
 暮らしにとけ込むわらべうたの絵本です。
 にわとりが歌いながら
 みんなをつんつんつついて、起こしていきます。
 「ととけっこー よがあけたー
  まめでっぽー おきてきなー」
 「ぴよ ぴよ ぴよ おはよう」
 二拍子の単純なリズムにのせて、
 「ソソラーソー*ソソララソー*
  ソソラーソー*ソソララソー*」(*は四分休符)
 初心ママ/パパでも即歌える、入門わらべうた。
 「まめでっぽー」の部分を
 「○○ちゃん」や「△△くん」に替えて歌ってみて。
 「おきなさーい」より、やわらかく「おきてきな」。
 大好きな人の声なら、なおさら
 楽しい気持ちで目覚められそう。
 おっとりと懐かしくあたたかい絵も、
 親子の笑顔を引き出してくれます。
 
 『ととけっこうよがあけた』(わらべうたえほん)
 ましませつこ/絵 こばやしえみこ/案
 こぐま社 定価945円 2005
 ぐっと厳かな日の出もあります。
 『よあけ』は、大人の男性にも静かな人気のある名作ですが、
 小さな人たちも引き込む力のある、絵本中の絵本です。
 音もなく、動くものもない、湖畔の夜のしじまに始まって、
 だんだんと、だんだんと、クレッシェンド。
 画面の色や大きさも、ことばも、景色のなかの気配も、
 少しずつ目覚めていきます。
 「さざなみ」がたち、「もや」がこもり、
 生きものが一羽、一匹、また一羽、二羽、
 動く音や鳴く声が聞こえてきます。
 そして、人も……
 本のたたずまいにふさわしく、格調高い訳文。
 自然を描く美しい日本語は、
 ところどころむずかしく感じられるかもしれませんが、
 読んであげれば声に乗り、子どもの耳にも心地よく響くでしょう。
 ゆっくりページをめくってください。
 最高の日の出の瞬間に、息をのみます。
 
 『よあけ』
 ユリー・シュルヴィッツ/作 瀬田貞二/訳
 福音館書店 定価1,260円 1977
 初日の出を見逃した人、早起き苦手な人、
 残念な昨日をリセットしたい人……
絵本の日の出が、新しい空気をはこんでくれます。
広松由希子 ひろまつゆきこ/絵本の文、評論、展示、講座や絵本コンペ審査員などで活躍中。
  2017年ブラティスラヴァ世界絵本原画展(BIB)国際審査員長。著作に絵本『おかえりたまご』(アリス館)、「いまむかしえほん」シリーズ(全11冊 岩崎書店)や 2001~2012年の絵本案内『きょうの絵本 あしたの絵本』、訳書に『ヒキガエルがいく』(岩波書店)『うるさく、しずかに、ひそひそと』(河出書房新社)など。2020年8月、絵本の読めるおそうざい屋「83gocco」をオープン。https://83gocco.tokyo
web連載「広松由希子の今月の絵本」
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