子どもも大人も、みんな楽しい「ヨシタケシンスケ展かもしれない」
いまや新作を発表するたびにベストセラーを記録する絵本界のスーパースター、ヨシタケシンスケさん。
4月9日より東京・世田谷文学館にて、ついに「ヨシタケシンスケ展かもしれない」がスタートしました!
「子どもを連れて行きたいけど、うちの子ちゃんとしていられるかな」
「大人は展示をじっくり見たいけど、子どもってすぐ飽きちゃうのよね」
そんな不安を抱える親子や、はじめて展覧会に行くという子連れにこそおすすめしたい「ヨシタケシンスケ展かもしれない」。
どんな人にもウエルカム! なユニークな会場の様子をレポートします。
ふつうの展覧会なわけないでしょう
一般的に、絵本作家の展覧会といえば原画を鑑賞するもの。でも「ヨシタケシンスケ展かもしれない」には、そんな既成概念は通用しません。
ヨシタケさん自らアイディアを出しまくり、展示にふかーく携わったとなれば、これはもう百聞は一見にしかず。
期待に胸を膨らませて会場に入ると、まずはダンボールでつくられた展覧会場が。
いかにも手づくりな雰囲気が、なんともほほえましい風情を醸しだしていますが、これってメインビジュアルに載ってるアレじゃないですか!
「ヨシタケシンスケ展かもしれない」のイメージ ©Shinsuke Yoshitake
メインビジュアルを再現するため、ヨシタケさんに座ってもらいました。
ダンボールをくりぬいた小さな扉に「いりぐち」と書いてあり、この中に「ヨシタケシンスケのすべて」が詰まっていると思ったら、ちょっとゾクゾクしちゃいます。
ガリバートンネルで小さくなって、ダンボールの中に入った先がこの会場につながっている……そんな空間の歪みを疑似体験できるような導入部です。
ああ、「ヨシタケシンスケ展かもしれない」に来たんだなあ、という感慨がひしひしと襲ってきます。
圧巻! 2000点を越えるスケッチ
壁一面にどーん! と並んだ小さなスケッチの数々。実はこれ、ヨシタケさんがいつも持ち歩いている手帳の実寸大の複製原画なのです。
思いついたことや考えたことを、その場でスケッチする習慣があるヨシタケさん。ここに書き留めた小さなアイディアが、絵本に発展することも少なくありません。
ヨシタケさんの発想の源や、深層心理が見え隠れしているかも……。
やがて絵本の種が実を結び、後に原画として完成することになります。
こちらは『ものは言いよう』(白泉社刊)の原画。
会場から悲鳴が聞こえる!?
そして、会場にはヨシタケさん自ら考案した来館者参加型のアトラクションも!
こちらは「りんごを投げてうるさい大人を黙らせる、りんご投げ放題コーナー」。
大人たちの口の中にりんごを投げ入れると……?
また、「会場から悲鳴が聞こえるようにしたかった」と語るヨシタケさん。
会場には、大人も子どももみんながいっしょになって楽しめる工夫がたくさんあるのです。
こちらは、「天国と地獄をちょっとだけ体験できるコーナー」。
ぜひトゲトゲのイスに座って、苦悶の悲鳴をあげてくださいね(感染対策は万全に!)。
展覧会に来て痛い思いをするなんて、前代未聞かも。
会場1階には、最新作『かみはこんなに くちゃくちゃだけど』と『つまんない つまんない』(ともに白泉社刊)の顔ハメコーナーもあります。
子どもがつまんなそうにしていたら、ぜひそのままの顔で思い出の1枚を!
すみずみまで見逃せない!
むき出しの木材や、ジップロック、フセン、スタンプなどを使った会場は、入り口の「ダンボール会場」と響きあうように、手づくり感が満載。
あちこちにペタペタ貼られた黄色いフセンは、ヨシタケさんの描きおろしコメントです。オープン当日の朝まで描いていたという、ライブ感あふれるフセン。
板と板のスキマや小さなスペースや、床すれすれの低い位置にも、ヨシタケさんの私物コレクションが。
かくれんぼみたいなさりげないしかけで、小さな子どものほうが見つけるのが上手かもしれませんね。
図録は「あったかもしれない展覧会」の記録
『ヨシタケシンスケ展かもしれない 公式図録 こっちだったかもしれない』(白泉社刊)は、ヨシタケさんが大好きだという「ちっちゃくて分厚い本」に。496ページもの大ボリュームにクロス装、金の箔押しというゴージャスな佇まい。
アイディアスケッチや原画、私物コレクションの他、ヨシタケさんが「展覧会のために考えたけどボツになってしまった」大量の構想メモもたっぷり収録。図録でしか読めないコンテンツで構成されたスペシャル仕様になっています。
気になる展覧会限定グッズもチラリ
今日という1日の記念に、おみやげを持ち帰りたいのが人の心。
ヨシタケさんは、限定グッズのために、オリジナルイラストをたくさん描きおろしました。絵本とはまたちがった楽しみがあるのも、ファンにはたまりません。
保護者の心をワシづかみにする楽しいグッズもありますよ!
子どもと行く「ヨシタケシンスケ展かもしれない」のススメ
ヨシタケさんは、他にはないユニークな展覧会についてこう語ります。
「子どもの頃、親に美術館や展覧会に連れてきてもらっても、つまんなかったんです。ただ額がずらーっと並んでるだけだし、もう帰ろうよってなっちゃって。でも、大人はゆっくり見たいしっていう。
だから、子どもは子どもなりに面白がれて、大人は大人なりに楽しめる場所にしたいと思っていました。少なくとも、子どもの頃の自分だったらそれがうれしかったのに、という思いがあったんです」。
こんな風に言ってくれたら、子連れの不安も吹き飛んでしまいそう。
「ヨシタケシンスケ展かもしれない」は、子どもにも大人にも、みんなにひらかれているのです。
「かもしれない」の可能性がどんどん広がり、ヨシタケさんの驚異の想像力に驚かされると同時に、未来にもちょっぴりわくわくするすることができる……。それが「ヨシタケシンスケ展かもしれない」なのかもしれない。
訪れた人みんなを笑顔にしてくれる、ヨシタケシンスケさんからのプレゼントのような素敵な展覧会です。
なお、現在発売中のMOE5月号でも「ヨシタケシンスケ展かもしれない」の魅力を徹底解剖!
展覧会のために描きおろした作品や構想メモの他、ヨシタケさんの創作にまつわる貴重なロングインタビューをお届けしています。
ぜひ、本展の予習&復習にご活用ください!
撮影/黒澤義教 取材・文/木村帆乃
■ 東京 2022年4月9日(土)~7月3日(日) ※日時指定制
世田谷文学館 2階展示室
東京都世田谷区南烏山1-10-10
TEL. 03-5374-9111
開館時間/10時〜18時 ※展覧会入場、ミュージアムショップの営業は17時半まで
休館日/毎週月曜日
料金/一般1000 (800)円、65歳以上・高大生600 (480)円、小中生300 (240)円、障害者手帳をお持ちの方 500(400)円(ただし大学生以下は無料)
※( )内は団体割引と「せたがやアーツカード」割引料金
主催/公益財団法人せたがや文化財団 世田谷文学館、朝日新聞社、白泉社
協力/アリス館、PHP研究所、ブロンズ新社、ポプラ社
後援/世田谷区、世田谷区教育委員会
●グラフィックデザイン/大島依提亜 会場構成/五十嵐瑠衣
【チケット販売情報】
本展では混雑緩和のため、日時指定券のご購入をお願いしております。 詳細はオンラインチケットサイトをご覧ください。https://e-tix.jp/setabun/
●未就学児はご予約の必要はありません。
●当日券の予定枚数が終了している場合はご入場いただけません。
●お電話でのご予約は受け付けておりません。
●週末・祝休日・会期末は混雑が予想されます。平日、会期前半のご来場をお勧めいたします。
【ご来館にあたって】
●新型コロナウィルス感染症拡大防止のため、ご入館時にマスク着用と検温等のご協力をお願いしております。
●駐車場は利用台数が限られます。公共交通機関のご利用をお願いします。
●展覧会の会期および内容が、急遽変更や中止になる場合があります。ご来館前に世田谷文学館のウェブサイトをご確認ください。
■ 兵庫 2022年7月15日(金)~8月28日(日)
市立伊丹ミュージアム
兵庫県伊丹市宮ノ前2-5-20
■ 広島 2022年9月23日(金・祝)~11月20日(日)
ひろしま美術館
広島県広島市中区基町3-2 中央公園内
■ 愛知 2022年12月10日(土)~2023年1月15日(日)
松坂屋美術館
愛知県名古屋市中区栄3-16-1 松坂屋名古屋店 南館7階
その後、全国を巡回予定(会期は変更の可能性があります)。
■ 「ヨシタケシンスケ展かもしれない」公式ウェブサイト
https://yoshitake-ten.exhibit.jp/