『クリコ』【今日の絵本だより 第260回】
kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。
こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子で一緒にこんな絵本はいかがですか。
『クリコ』
シゲタサヤカ/作 小学館 1540円
そろそろ、クリスマスまでカウントダウン。
毎年この時季は本屋さんがクリスマス絵本でにぎやかになりますが、その中でも今年ひときわ注目を集めているのは、こちらの新刊ではないでしょうか。
シゲタサヤカさんの『クリコ』をご紹介します。
今日はクリスマス。
朝はサンタさんにおもちゃをもらって、昼はおとうさんと一緒にクリスマスケーキを買って、夜はおかあさんのごちそうがテーブルいっぱいに。
チキンにエビフライ、スープにグラタン。
「おいしくって ほっぺたが おちそうだね、おかあさん!」
ってぼくが言ったら、
「ほんとうねー おちそうねー」
と返ってきた返事は、あれ、おかあさんの声じゃない……!?
「あたいだよ」
って、クリスマスケーキがしゃべってる!
というか、ごちそうも、もぐもぐ食べてる!!
このしゃべるケーキに手をかけていいものか、困ってしまったぼくたちに、
「このまま あたいと いれば
すごーく いいこと あるのに」
と言う、クリスマスケーキの「クリコ」。
「とりあえず あしたの あさまで まってよ」
との言葉通り、翌日まで待ってみたら、12月26日なのにぼくにクリスマスプレゼントが届きました。
クリコがいれば、毎日がクリスマスらしいのです。
ぼくはもちろん大喜び。
こうして、家族の一員になったクリコですが……。
「毎日がクリスマスだったらいいのに」、誰でも一度は思ったことのある、そんな願いが叶ったら……。
その結果は、読んでのお楽しみ。
個性強めの登場人物(食べもの)がユニークなシゲタサヤカさんの作品に、またひとり新たな主役が登場です。
私もすでに
「おくさん、おりょうり
とっても じょうず」
とクリコに言われたいなあ、なんて思うくらい、あっという間にクリコのとりこになっています。
シゲタさんにとっては初となるクリスマス絵本、でも一年中いつでも楽しめること間違いなしの作品ですよ。
選書・文 原陽子さん
はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。